三、老猫のごはんストライキ。

効き目絶大、ネットの口コミでも美味しそうに食べると評判のヒルズの腸内バイオームだが、実家で拾い食いを趣味とし、父の気まぐれで与えられた人間の食事と、母にクスリと混ぜて与えられていたヨーグルトを日常の楽しみとしていたソルの心を掴むことは出来なかった。

どんなにハラヘッタ!と訴えている時でも、腸内バイオームのことはゴハンとして認めないのだった。

最初に試した療法食、ロイヤルカナンのアミノペプチドの方は、ルナの口にまったく合わない一方で、ソルは嫌がらずにパクパク食べた。

しかし腸内バイオームは、ルナが合格点を出して機嫌良く食べる一方で、ソルは2回食べたのち、これは食べ物ではない、とジャッジした。

とは言え、本人がなんと思おうと腸内バイオームを食べると下痢が良くなるという事実は既に確認されており、他に有効な手立てはない。

何とかして食べてもらうより他ないのだった。

室内飼いのノラ猫、呆れた姉にそう呼ばれていたソルは、ルナと違って家人の目を見計らってはすぐに食卓に乗った。また、ルナは一度たりとも攻略したことも、しようとしたこともないキッチン手前にある侵入防止用のゲートのスキマから易々とキッチンに入ってきた。

特に晩ごはんがアジの開きやサバの塩焼きだった日は執拗に拝むし、食卓に誰かがつこうものなら、何かがこぼれ落ちてくるかもしれないと、その下を離れないのだった。こんな風に食汚くなってしまった子に、工夫を凝らして美味しくしてもらっているとはいえ、基本クスリな療法食を一体どうやって食べてもらえば良いのか…。

トライ&エラーを繰り返す日々が始まった。