二十、すべてネコの思いどおり。

 

減量r/dもヤだね、ヤなこった、というスコストが始まってから3日目。

ソルが一転、しょんぼりとした姿を見せるようになった。

目が合っても得意のちょーだいちょーだいポーズをしない。

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こちらが目を合わせようとしないと

「ほんぎゃぁ、おっかぁ〜」

と、赤ちゃんの真似のような声を出し、是が非でも振り返らせようとするのが常なのに全く鳴かない。

うなだれ、生気なくとぼとぼと家の中を歩いている。

そうして、時折こちらをチラと見る。

細い目を精一杯ひらいて、つぶらな感じにし、小首をかしげ、推定年齢76才の出せる精いっぱいの健気な可愛らしさを振り撒きながら私の周りをうろつく。

おまけに深夜には、わざわざ玄関のヘリにまで行き、大音量で、

「なお〜ん、なお〜ん」

と鳴く。

それはもう確実に、

「誰かここから助けてくださ〜い!可愛いジイサン猫がひどい目に遭っているのです〜」

と訴えている。

 

…ああもう気になる。

いやだいやだ。もう負けそうになるなんて。

ただいま絶賛、

「知らんぷり。食べなくたって知らないよ、あぁそうですか、ふ〜ん…大作戦」の実施中ですから。

危ない危ない、と毅然と知らん顔を決め込む。

私は自分が化したミッションを忠実に遂行しなければならない。こんなにすぐに陥落するなど、決してあってはならない。

 

そう、私は忠実に遂行していた。

 

やがてルナはモグモグと少しだけ食べた。

「この家はこういう家なのよ。」

と、仕方なさそうながらも、生存に必要なカロリーは押さえておこうとしているのかもしれない。

 

ルナは普段、(ズル)賢さに関して完全にソルの後塵に排している。しかし、ムダなことはしないという一点においてソルよりはるかに効率よくエネルギーを温存している。

ノルマのように一定量を食べ終えると再び居眠りを始めた。

 

一方でソルは、ルナが食べていた皿を見るものの、やっぱどうしてもムリ、と、食べない。少しも。心なしか涙目にも見える。

 

私は情けなくも早くも自分に限界が来つつあることを感じた。

あんなに切なそうにヨタヨタと歩く老猫がこの世に他にいるだろうか(いっぱいいる)

私は非情で冷酷な飼い主なのではないだろうか(下僕という観点からしたら多分高レベル)

頭の中は既に、何か打開策がないか必死で探しているのだった。

 

家から逃げるようにフラフラと、投薬補助に使っているちゅ〜ぶを買いに行った。

売り場を物色していると、ふと目に止まったそれは、猫用の鰹節のフリカケ、アキモトの、その名も「猫ちゃんのふりかけ」159円である。

 

先生からは、胃腸の状態を考えると、投薬の補助として使っているちゅ〜る以外は与えないようにと言われていた。

 

が、先生からのアドバイスを思い出した頃には時既に遅し。

お会計を済ませ、愛猫の待つ家にソワソワと向かっていたのである。