不穏な物音に対する私の心配を、睡魔に勝てず適当にあしらった主人の体に異変が起きた。
夜遅く帰宅し、入浴後リビングで寝落ちしてしまった彼は、翌朝猛烈な痒みに襲われた。
足のあちこちが真っ赤に腫れている。
ひどい痒みだったようで、痛風になっても骨折になっても3日は寝かせて、すぐには病院に行かないくらい、めったなことでは病院に行こうとしない主人が、びっくりするほど速やかに病院に駆け込んだ。
相当な痒さだったに違いない。
お医者さんには、
「家ダニの類の何かに刺されましたね…」
とだけ言われ、塗り薬を処方された。
後になって、この時のことを
「医者はすべてお見通しだったのかもしれない。アレに寄生するような、こんなモノに刺されるなんて相当不潔な家に住んでいるハズ、と分かっていたけど、さすがに口に出さなかったんじゃないか」
と述懐している。
主人はこういった、ダニとか菌とか目に見えづらいモノに対する恐怖心は私の何倍も持っている。
身をもって痛い目にあったことで、深夜の物音をまるで気にしなかった彼の心の片隅にも、何か引っかかるモノが生まれたのは、おそらくこの瞬間だろう。