ひとまず天井裏の様相がわかったため、まずは和室の長押の裏側を塞ぐ、という地味なミッションから取りかかることにした。
ヒトの居住空間と、子ネズミ一家の居住空間が最も近い場所がここである。
ここを塞げば、とりあえず、子ネズミ一家とダイレクトに空気を共有する感じはなくなる。
もう二度と、遊んでいたのか、歩く練習をしていたのか知らないが、うかつな子ネズミが落ちないようにしなければならない。
ただ懸念されるのは、この行為が子ネズミ一家を勘違いさせてしまわないか、ということだ。
つまり、一家がこの作業を、
「子ネズミが安全かつ安心して成長するために安全柵を設置させて頂きました」
と、私が彼らに良かれと思って親切でやっていると思われてしまわないだろうか。そこに一抹の不安があった。
「なんていい大家さん、あなた、やっぱりここで子育てしましょうよ!」
「そうだな、こんな大家もいるもんだな」
「パパ!ぼく、ここならいくら走っても怖くないよ!」
と、いうように盛り上がってしまったら彼らがますます居ついてしまう。
そのような勘違いを起こさせないための対策も、考えておく必要があるだろう。
しかし本当に、子ネズミが落ちて来たあの日から、私の脳は子ネズミ一家に完全に支配されてしまった。
そしてこれから先、この「子ネズミ一家サヨウナラ大作戦」がいつ決着するのか、決着までに費用がどの程度かかるのか、現時点ではまったくわからなかった。
予算と期日が大きく変わる要因としては、「ヒト(業者)の手を借りるのか、借りなくて済むのか」の一点にかかっている。
今はまだそこがわからない。だから出来るだけ予算を抑えたかった。
そこで、家の中の廃材的なもので、何とか長押の裏を塞げないものかと考えた。
思いついたのが、先日取り外したパズルマットだ。厚みも結構ある。
取り外したのは、ルナがそこで爪を研ぐのが大好きで、いくらやめさせようとしてもやめないので、マットの表面がボロッボロになってしまったからだ。
というわけで、ちょうど(ネズミなんか絶対に獲れないタイプではあるが)猫の爪のニオイが良い感じに付いているはずである。
パズルマットを細切りにし、それを重ねてギュギュギュッと長押の裏の隙間に埋めていった。
結構入る。
あれ、ホントにたくさん入る。
…全然足りない。
コレは他にも埋めるモノが絶対に必要だ。何かないのか…。どうやらウチにはなさそうだった。
となると、木材、もしくは発泡ウレタンあたりか。どちらが費用がかかるだろうか。
というわけで、近所のホームセンターに金額の偵察に向かった。