侵入者14・くっつかないでいて欲しい

華丸さんに教えてもらった子ネズミ一家の出入り口に、勇気を出して手を突っ込んでみると、確かに中がスカスカだった。

どうやらここを出入り口として使っていることは間違いなさそうだった。

そこでハタと思い出した。
この家を中古で買った時、前の持ち主が、サッと見せてすぐにしまった書類の中に「シロアリ駆除済」とあったことを。

別に駆除が済んでいるなら良いだろうと思って今まで気にしていなかったが、ひょっとしたら、やられた場所こそが、まさに今、子ネズミ一家の出入口になっているのかもしれない。いや、きっとそうだろう。

そして、その後に羽アリが出て、華丸さんの会社に点検をお願いしたのだから、ひょっとしたら華丸さんは、我が家のもろい部分をリサーチ済みだったのかもしれない。

それなら出入口をあんなに早く見つけ出したことにも合点がいく。

大きな法人なので、ネズミ班とシロアリ班で情報共有がされていたのかどうかはわからないし、前に来たシロアリ班が、過去のシロアリ駆除の場所を把握していたのかは謎であるが、とにかく華丸さんのおかげで出入口がわかったことは確かだ。

そしてその出入口が、私たちの玄関のすぐ隣だったことにショックを受け、怒りに任せて購入した、ホイホイの「縦壁貼り付けタイプ」と、「地面据え置きタイプ」を、一家が外出しているはずの昼過ぎに、それぞれ出入口直下の壁と地面に固定した。

粘着テープにくっついて、ホイホイされる前に、

「おや?なんだコレは?」(パパ)

「こんなモノ、昨日はなかったわよ。あなた、罠かもしれないわ」(ママ)

「なんだコレ?あ、なんだかイイにおいがする!」(子ども)

「あ、コラ!ダメよ!今日は家には帰りません。今日は公園に泊まりましょう。あなた、行きましょう。さ、子どもたち、行くわよ。」(ママ)

という展開になりますように。
ママ、頑張れ。

ボチボチ高い商品にも関わらず、ここに子ネズミ一家がくっついて「ホイホイ大成功」となった後のことを視覚的に思い浮かべると、

「どうか、どうか誰もくっつきませんように」

と祈ってしまうのだった。


その後、長押の裏もウレタンフォームで完全に塞いだ。

スプレーも天井裏にちょくちょく振りかけている。

子ネズミ一家包囲網はジリジリと張り巡らされつつあった。