可愛い愛猫ルナの背中に小さな小さなシコリを見つけたのは2年前だった。
本当に小さい粒のような大きさだったから、最初は毛の塊かも、と期待を込めてそう思った。
気のせいにしたかったけど、月日を経て少しずつ成長していったソレは、半年を過ぎた頃にはもう、毛の塊などと誤魔化しようがないほど立派な大きなデキモノとなり、その存在感たるや、ボコンとし過ぎてコームを背中にかけづらくなってしまう程となった。
持病持ちなので、定期的に動物病院に通っていたが、先生もその育ちっぷりには目を見張っていた。
しかし、切開には時期尚早であるということ、けっこう硬いから中身を吸い出すのは難しいこと、少しだけ中身を抜いてみたところ、タチの悪いものではなさそうであること、などから、しばし様子見、という診断になって数ヶ月が過ぎた。
粉瘤はなおもスクスク成長していったが、段々見慣れてきて、当たり前にボッコリと、そこに存在するものとして受け入れるようになっていった。
そんなある日、定期検診の時に先生が、
「今日は…ちょっと柔らかい感じです。これなら注射器で吸い出せそうです。」
と言った。
それから診察室のドアは閉まり、待合室で待つこと数分。
やがて、にこやかにスタッフの方がドアを開けてくれた。
そこには、銀色のトレイにこんもりと盛られたカス?脂肪?ホコリ?灰色の消しゴムのカスみたいなものがたんまりあった。
「こんなに入ってました」
と、先生。
写真を撮っても良いかと聞くと、ど〜ぞど〜ぞと言ってくださったので撮影した。現物を持ち帰る発想はさすがになかったけれど、写真は家族に見せてあげよう、と思って撮った。
帰宅後、早速、興奮しながら粉瘤の中身を見せてやろうと写真をスマホに出そうとすると、主人もムスコも、「いいよ!やめて!」の一点張り。本当に見たくないと言う。
私にはまったく理解できない。ずっと、あの可愛い我々家族のアイドルの中に入っていたモノの正体がせっかく見れるのにどうして断るのか。
好奇心が足りな過ぎやしないか、と、心配になる。
が、もしかしたら男女の差なのかなとも思った。
なぜなら動物病院の担当の先生は女性で、「こんにゴッソリ取れました!」と言ったその表情は、明らかに「あー!楽しかった!」と言っていたし、スタッフの女性も、待合室の私を呼んだ時、明らかに「早く早く!コレ見てコレ!!」と思っているのが伝わってきた。
私自身、拡大して散々観賞してからゴミ箱に入れて消去した。
全般的に女性の方が、この手のスッキリ感を、それが排泄物的なモノであろうと動じず、楽しめる気がする。
そうしてルナの背中は、しばらくの間はペッタンとしていた。
が、やがてまたスクスクと成長を始めた。
粉瘤の袋を切除しない限り、結局またボコンとしてくるだろう。
近いうちに元の大きさに戻りそうな勢いだ。
次回はやっぱり2人のスマホに写真を送ってあげようと思っている。