三十二、猫に手作りごはんを作らされた話。食べ物の好みは猫によって全然違うという話。

胃腸に優しい食材とはなんだろう…と考えて思いついたのが、赤ちゃんたちも離乳食でよくお世話になるタラ。
白身で淡白で柔らかくて。あれなら絶対に喜んで食べるに違いないし、赤ちゃんが愛用するくらいなんだから猫にも優しいに違いない。

タラを思いつけたことが嬉しくて、頭の中はタラでいっぱい。タラ、タラ、タラを早く買いたくてたまらない。勇んで近所のスーパーに出動した。

果たして「鍋物用」と、可愛いお鍋のイラストシールを貼られたお買い得のタラを見つけて、早速購入することができた。
丸ごと茹でて、身を細かくほぐし、紫芋を少し混ぜてエサ皿に盛った。

ワクワクしながら様子を見る。気分的には、作った離乳食を子どもの前に出す時とまったく一緒だ。
猫たちはもう、まだかまだかと私の一挙手一投足を、それは真剣に見つめている。
新聞紙を敷き、お待たせ、と2つの皿を置く。
内心、これはイケるだろう、大喜びで食べるだろうと、自信たっぷりだった。

しかし予期せぬことが起きるモノだ。
今回はまさかのルナである。
ソルが、
「今日は魚か!魚はやっぱりウマイなぁ!」
と喉を鳴らして食べている横で、オズオズと固まっている。
少しニオイを嗅いで、「ウッ」と言ったまま、体を引っ込めてしまった。そのまま、お座りの姿勢から動かない。
どうやらルナにとって、タラは全然おいしそうではないらしい。ただの一口も食べなかった。

一方のソルも、食べ始めこそガツガツと食べていたが、そのうち、クチャクチャと不味そうに咀嚼し出し、途中で食べるのをやめてしまった。
子どもに渾身の離乳食を全然食べてもらえなかった時とまったく同じ気持ちになる。

結局3切れパックを買ったけれど、1切れどころか半切れも食べてもらえなかった。

残ったタラは、万が一食べなかった時の保険にと、ニンゲンの夕飯を鍋にしたので、その中にぶち込んだ。

家人が鍋を美味しそうにつつくのを見ながら、ネコが食べたくなくて残したモノ=コレってネコの残飯ってこと…?残飯…という言葉が頭を駆け巡るのだった。