三十三、猫に手作りごはんを作らされるまでの話。気付けばそこはバイキング会場。

「タラは食べたくない」

ルナにキッパリ断られ、ハタと気がついた。

そうか。ルナはタラを食べたことがなかった。
可愛いルナが食べられないんだったら仕方がない。どうするか。

ということで考えて、今度はサケを購入してみた。キレハシの詰め合わせみたいなやつ。これをニンジンのすりおろしと一緒にレンチンしてみた。

すると、果たして、今までサーモン味のゴハンを各種食べてきたルナは抵抗なく口にすることが出来た。やれやれだ。もちろんソルも食べられる。
サケならローテーションに組み込めるかもしれない。

しかしながら、実際にこれらの食材と食べられる療法食でまわし始めてみると、これが本当に難しい。
何しろ2匹それぞれの嗜好がバラバラ。積極的に食べさせたい療法食も、その逆にあまり食べさせたくないもの、食べすぎると下痢をしてしまうもの、すべてが違う。
微妙な匙加減で、様子を見ながら足したり、下げたりする必要があった。

「タラが嫌いでサケなら食べる」
以外にも、
「鶏肉なら、ササミよりもモモ肉が好き」
であり、更に、魚より肉食の女子だ。
豚の挽肉もガツガツ食べる。

ソルは、サツマイモよりニンジンが好き。
肉より魚のニオイに反応する。

ドライフードにはそれ以上の、ものすごいこだわりがある。特にソル。

ロイヤルカナンのアミノペプチドは、ソルは嫌い。だけど、ルナは好き。

ヒルズの腸内バイオームは、ルナは大嫌い。ソルもあまり好きではないけど食べる。

ロイヤルカナンの低分子セレクトプロテインや消化器サポートは2匹ともボチボチ食べる。

ヒルズのwdとrdは最初こそ食べたけど、今となってはソルは一粒だって願い下げ。
ルナの方は、wdはもうイヤ、けどrdはたまにならOK。

ロイヤルカナンの満腹感サポートは2匹とも好き。ユリナリーエイジングCLTは大好き。

ふりかけの類は、ルナはウェルカム、ソルは、かけるのはやめてと言う。
細かくしたり、ふやかしたりするのは、ルナはこだわらないけどソルはダメ。

半日以上置いた置きエサは、酸化するのかなんなのか、ソルは食べない。

この各々の趣向が、各々の体の具合とマッチしていて、好きなモノを食べていれば体も調子が良いのなら話は簡単だ。

問題なのは、好きなモノと身体に良いモノが、ほぼ反対であるということだ。

ルナは今のところ胃腸に問題がないからまだいい。問題はソルだ。
ソルが好きで食べたいモノは、ソルの超絶デリケートな胃腸が受け付けないことが多々ある。

それに2匹とも年を取るに連れて、一度にたくさん食べることができなくなってきた。

一度にたくさん食べない上に、かように嗜好がめんどくさいため、日を追うごとに、置きエサの種類が増えていった。
最初のうちは、そんなにたくさんの皿がないので、納豆の空きパックに少しずつ色々な種類を入れて並べた。

でも納豆パックだと食べづらいし、たくさん置いてあるのも美観を損ね過ぎる。

そこで、引き出物でもらったものの一度も使う機会がなかった、深さのある小ぶりで上品なデザート皿6枚を2匹に提供することにした。

ごはん置き場に並べられた、小皿6枚に盛られた療法食やササミやニンジン…。
そこはもはやバイキング会場のようだった。
気づいたらこんなサービスまでさせられるようになっていたのだ。
恐るべき猫の所業である。