三十九、尿路閉塞の話。かかりつけ休診で別の病院へ駆け込んだ。

夜中に時折り様子を見ながら、寝たのか寝てないのかよくわからない夜が明けた。

ソルは相変わらず、時々トイレにこもっては苦しそうにいきんでいる。

それでも目には力があったし、嘔吐も血尿もなかったため救急には行かずに済んだ。

昨夜、目星をつけた近隣の動物病院にインターネットで予約が出来た。
9時半の開始時間であったが、早く診てもらえるかもしれないと9時には待合室入りした。

コロナ禍で混雑を防ぐ為か、待合室は閑散としていた。インターネットで予約時間を管理しているのだから、考えてみたら早めに行くのも迷惑だったかもしれない。
しかし、ソルは"猫あるある"でしれっとしているものの、状況はおそらく逼迫した緊急事態のはず。今日ばかりは許してもらえるはずだ。

しばらく待っていると、感じの良い受付の方から問診票を渡され、ネットで書いたことと同じことを再度記入した。
そこからまたかなり待ったが、ソルはケージの中で鳴くこともなくじっとしていた。

そしてようやく診察室に促された。
とても背が高い、180センチは優に超える、30そこそこくらいの彫りの深い顔立ちの若い男性獣医師だった。
マスクをしているので顔全体はわからないが、せっかく彫りの深い顔立ちなのに、信じられないくらいの寝癖だった。
まあでも、彫りの深い顔立ちに完全にヘアセットされた長身よりも、バリバリに寝癖がついていた方が何となく獣医師としては信頼できる気もするのだった。

先生もスタッフの方も、ソルに優しく話しかけてくれて、まずは安心だった。

しかし、安心だったのは私だけで、ソルはまったく安心じゃなかった。
この頃では、すっかり従順に大人しく診察を受けるようになっていたソルが、渾身の力で診察台から降りようとする。

「お母さんは頭の方を押さえてください」

と言われ、そうしたが、ひととおり診ると、

カテーテルを入れるのは猫ちゃんも痛みが強いので、お預かりして鎮痛剤を打ってから処置します。その際に血液検査だけは絶対にやる必要があります。終わったら連絡しますが2、3時間かかります。」

と先生は言った。

お任せする他ない。
ソルを預けていったん帰宅した。