その夜。
・一度しか行ったことがない動物病院に行って、安楽死の処置をしてもらうのか。
・かかりつけで切開手術を受けるのか。
もし安楽死を選ぶのなら、次に閉塞してからでは間に合わない。明日、連れ帰ってそのまま、処置をお願いしに病院に向かわなくてはならない。息子も主人もこのままお別れ、ということになる。
考えあぐねた私は、なんて言われるか想像がついていたし、今思えば、そう言われるのがわかっていたからこそ、鈍っている自分の気持ちを振り切ろうとしていだのだと思うが、前の飼い主である実家に連絡した。
答えは思ったとおり。
金銭的な負担はもちろんのこと、この1年間の私の労力を考えたら、押し付けてしまって申し訳なかったという気持ちでいっぱいだ。愛玩動物で苦労するなど本末転倒だ。ましてやもう14才。人間と違って、安楽死できるのだ。羨ましいくらいだ。絶対に、ここをタイミングと考えて区切るように。迷うような話ではない、と。
主人にも相談した。
主人は常々、時間を問わず世話をせざるを得ない私の体調を心配していた。
そして、安楽死は私の気持ち次第、ただ次に大きな出費を伴うような重い病気にかかってしまったら、その時は終わりにしようと話していた。
だから私は、実家だけではなく、主人がなんと言うかもわかっていた。
わかっていた…はずだった。
しかし主人は意外なコトを言った。
尿路閉塞で入院する前日、私がいない時に、ソルがリビングで下痢をしてしまった。
やや神経質気味な主人は、苛立ちながら、怖がるソルをお風呂に連行し、強行的に洗いまくった。
そのため、すっかり怯えて近づかなくなったが、どうせまたすぐ忘れて隣で寛ぐだろうと思っていたら、そのまま入院してしまった。
このまま永の別れではあまりに夢見が悪い。今回を最後に、今回だけは手術を頑張って戻って来てもらいたい、と。
思えば、1年前に13年ぶりに我が家に戻って来たソルは、元々は主人が一目惚れして飼うことに決めた子だ。
一、そして再び飼いネコ2匹。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。
そして、ルナが私にベッタリな一方で、ソルは気づけば主人の隣で丸くなって寝ている。
戻ってきた最初の頃こそ、興味もなく、明らかに迷惑そうな様子の主人だったが、私の知らないうちに仲を深めていたようだ。
主人の言葉で、そうか、と思った。
そうか。私も、そうしたかったんだ。
「冷静に考えろ!後悔するぞ!」と、黄色い警告灯は相変わらず頭の中で回っている。
だけど気持ちは、ソルのあったかな温度でいっぱいだった。