onoesanと猫と保育となんやかんや。

〜おいぼれ猫たちとの日々と、あれやこれや〜

保育園で。ショウイチくんはとても大事なことを学んだ。

※これはあくまで私の体験談をベースとした話です。保育方法をはじめとする諸々は保育園によって千差万別です。

ショウイチくんは、あと数ヶ月で3才になる2才の男の子だ。

それは賢く、優しく、2才にして聡明さを絵に描いたようなお子さまである。
話していると2才であることを忘れそうになる。

ショウイチくんにとって同じクラスのお友だちは、まだまだ小さな、自分が導いてあげなければならない、いたいけな存在である。

だから、常に周りを見守り、間違っていたら正してあげるというミッションを胸に秘めて過ごしている。

そんなショウイチくんは最近、若干2才にして、とても大切なことに気がついた。

きっかけは複数ある。

—朝の出来事。

ショウイチくんが型はめパズルで遊んでいる時、その前を、クマのぬいぐるみを持ったサエちゃんが横切った。

ちょうど横切った時に、サエちゃんの視界に、誰も使っていない人気のおままごとセットが飛び込んできた。

サエちゃんは慌てた。
「誰にも渡さない」
クマのぬいぐるみをその場に投げ捨てて、おままごとセットに猛進する。

その様子をじっと見ていたショウイチくんは、立ち上がった。

クマのぬいぐるみをそっと拾い、おままごとに夢中なサエちゃんに近づき、優しく言った。

「サエちゃん。クマさん投げないでね。元の場所に戻してからおままごとしようね。」

サエちゃんは、冷たい目でショウイチくんを見つめ、それからショウイチくんが持っているクマを見つめ、何事もなかったかのように再びおままごとを始めた。

ショウイチくんは再び、

「サエちゃん。クマさんをお片付けしてから、おままごとしようね。」

するとサエちゃんは、クマをショウイチくんから奪い取り、あろうことか、あさっての方向に投げた。
そして再びおままごとを始めた。


—お散歩で。

ショウイチくんと手をつなぐリコちゃんは、最近たくさんの歌を歌えるようになったところだ。
お散歩中に可愛らしい声で色々な歌を聴かせてくれる。

この日もそうだった。

「ヒ〜ラ〜ヒ〜ラ〜ひ〜か〜る〜お〜そ〜ら〜の〜ほ〜し〜よ〜〜♪」

「リコちゃん。ヒラヒラ、じゃなくて、キラキラだったね。こうだよ。聞いて。キ〜ラ〜キ〜ラ〜…」

リコちゃんは、ショウイチくんの声を完全に無視して、正しいキラキラ星を打ち消さん勢いで、

「か〜え〜る〜の〜う〜た〜が〜……ピョコン、ピョコン、ピョコピョコピョコピョコクワックワックワク〜♪」

「か〜え〜る〜の〜……ケロケロケロケロ、クワックワックワ〜♪ ね、ピョコピョコ、じゃなくて、ケロケロなの。いい?わかった?」

リコちゃんの顔が段々と凍りついて行く。
そしてリコちゃんは、ショウイチくんの声にかぶせて更にボリュームアップして、

「ピョコピョコピョコピョコクワックワックワ〜♪」

と歌ってみせたのである。

「リコちゃん。そうじゃないよ。ピョコピョコ、じゃなくてケロケロ。もう一回歌うから聴いててごらん。」

という会話が、お散歩の間中エンドレスで続いたのだった。


—そしてお昼ごはんで。

ショウイチくんの隣はマイちゃんだ。
マイちゃんは食べるのが大好きで、お昼ごはんをとても楽しみにしている。
エプロンを付けたマイちゃんは手を合わせて元気よく言った。

「おいしいおやつ、頂きます!」

「マイちゃん、おいしいおやつじゃなくて、おいしいお給食、ね。いい、こうだよ。おいしいお給食、頂きます!ね、わかった?」

マイちゃんの顔が曇る。
昨日も言い間違えた。つい食べたい気持ちがはやって、また今日も間違えちゃった。そしてまた今日もショウイチくんに注意された。

ショウイチくんは、マイちゃんに正しいことを伝えることができ、満足して食べ始めた。
かたやマイちゃんは、スプーンを持つ手がプルプルしている。

そして。マイちゃんは叫んだ。

「マイちゃん、いっしょうけんめいやってるのにショウイチくんはうるさい!!」

そうして悔しそうに泣き出した。

ショウイチくんはビックリした。

正しいことを教えただけなのになんで泣いてしまったんだろう…。


次の日からショウイチくんは変わった。
リコちゃんの間違った歌詞も、マイちゃんの言い間違えも黙認するようになったのだ。
そしてサエちゃんが相変わらず夢中になってオモチャを投げると、何も言わずにそっと片付けるようになった。

ショウイチくんは若干2才にして、

女性にダメ出しをしても良いことはひとつもない。

ということを学んだ。

結婚してから初めてこの大切な気づきを得る男性が多い中、早くも保育園で学んでしまったショウイチくん。

賢く優しいショウイチくんの未来に幸あれ。