あんなに虫が好きだったのにね、という話。

年末も年末、今日になって、とうとう重い腰を上げて外回りの掃除をした。

あまりにも放置していたので、庭の雑草は、チンゲンサイか小松菜か、というくらいに青々と伸びホーダイ。
すべて食べられたらよかったのに、と思いつつ、どんどんむしった。


「少しは手伝え」

と、駆り出したムスコは、

「庭掃除だけはムリ」

と、腰が引け気味。

「庭掃除だけはムリって、結局のところ何もしたくないだけでしょ。」

「違うって。窓磨きとかお風呂の掃除ならいくらでもやるよ。でも庭は勘弁して。」

と、キッパリ。

私なら、寒いのだから水仕事より草むしりの方がよっぽどマシだけどな。


「だって庭は、変な、虫とかいるじゃん?」

と言う。

どうやらここ数年で、すっかり情けない「つまめないオトコ」になってしまったらしい。
保育園で。保育園にいるのは大体つまめるタイプの女だという話。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。

「あんたねえ、こんな真冬に虫なんていないからサッサとやっちゃって。」

言いながらため息をつく。



(こっちはこの一年で何匹触ったと思ってんの…)

そう。

今年もたくさん、たくさん触った。

特に(落ちている)セミ、と、ダンゴムシ

子どもたちはそれらを捕まえると、親切心だろうか、手のひらを出せと言う。

素直に出すと、通常モードではココロが受け止められないモノをどんどん乗せてくる。

圧をかけられてペチャンコのアリやバッタ、
既にとっくにサヨウナラしてパーツの欠けたセミ、とか…

そして、
「先生、アリさん寝ているね。起きてー!起きてくださーい!」

必死でお願いする。

起きない。


「先生、アリさん、起きないよ。起きて、起きてー!」

「先生、アリさん、起こしてよー!ワーン!」

そうして、泣きながらそれらを撫でるのだ。


あんなに愛情深く接しているあの子たちも、あと10年経ったら、ウチのムスコのようになるのだろうか。

少し前まで嬉しそうにバッタを捕まえては図鑑で調べていたムスコが、庭にいたカメムシか何かを見つけて、

「うわ。何これ。まじムリなんだけど。」

などと呟く姿を見て、二度目のため息がでるのだった。