保育園で。多分、おばあちゃんの呪縛だろうという話。

※これはあくまで私の体験談をベースとした話です。保育方法をはじめとする諸々は保育園によって千差万別です。

2才になったばかりのシンちゃんのママは、シンちゃんのことが心配でたまらない。

連絡帳にはいつも、

「保育園に行きたがりません。」

「行きたくないと泣いて嫌がります。」

「かわいそうで仕方がありません。」

「子どもに申し訳なくなります。」

「連れて行くことに対する罪悪感でいっぱいになり、仕事が手につきません。」


などと書いてある。


そのたびに、少しでも不安を払拭してもらおうと、

今日はどんな場面で楽しそうだったか、

夢中になっていたか、

笑顔を見せてくれたのか、

畳み掛けるようにお返事を書いている。



しかしまるで心に届かない。

判で押したように、日々「かわいそう」が続く。


実際、登園する時に泣くお子さんは多い。

ただ、そういう子はきちんと甘えられる子なので、ママが見えなくなれば保育士に甘えられる。

結果、日中はけっこう楽しく過ごすことができているのだ。


けれど、分離時の大泣きする姿が頭にこびりついて離れないシンちゃんのママには、こちらの思いはちっとも届かない。

お迎えのパパに保育園の様子を伝えても、連絡帳の内容は少しも変わらない。

かわいそう、申し訳ない、不憫…という思いが渦を巻き、その結果、飽きもせず同じ内容が続く。


若いママが今時、預けることに対してここまで罪の意識を持つのには、背景に実家の母親というのがあるのかもしれないな、と、ついつい想像してしまう。


姑の考えならば、

「は?何言ってんの今時?やっぱりお義母さんキライ。」

と、心の中でつぶやいて終わりだろう。


旦那がこのようなことを呟いた日には、何らかの制裁を下すまでだ。


ましてや義父や実家の父親の意見など、歯牙にもかけないに違いない。

(そんなことはない、という人もいるとは思いますが…)


しかし実家の母親は厄介だ。

会うたびに言われているのかもしれない。

信頼する人、頼りにしている人に言われ続けたら、もうそれは洗脳であり、呪文の言葉になってしまうだろう。


毎回毎回、連綿と続くこの内容を、一体どうしたら回避できるだろうか。

預かる側からしてみたら、はっきり言って気分が悪いし、失礼な話なのである。
ましてやシンちゃんは、ご家庭でやんごとない待遇を受けているらしく、かなり手のかかるお子さまなのだ。

「そんなに心配なら預けなきゃいいじゃないですか!」
と、言ってみたいし、いつか誰かが言ってしまうかもしれない(そしてそれは私かもしれない。)

どうしたらシンちゃんのママのココロの負担は減るのだろうか。

打倒、シンちゃんのママのママ(仮定)なのである。


とは言え、シンちゃんのおばあちゃんに会うことはないし、実際、今あれやこれやと頑張ったところであまり効果は見込めない気もする。

それより、あと1年も経てばシンちゃんがペラペラと喋り出すので、そこで本人の口から楽しかった出来事を聞くようになれば、おのずとこの悩みは解消されていくだろう。


でも。
出来ることならば、シンちゃんのおばあちゃんには、今一度、数々の名作本を読み返してもらいたいと思うのである。

フランダースの犬」のネロ、や「マッチ売りの少女」、「母を訪ねて三千里」のマルコに「一休さん」、「シンデレラ」、「ハリーポッターシリーズ」などなど…

「まぁまぁ、かわいそうに。本当にかわいそうな子ってこういう子たちを指すんだわ。この子たちに比べたら孫のシンはなんて幸せなんでしょう!私、すごく間違えてた!反省!

とか。

もしくは。
BBCニュースやCNNのニュースサイトなどを視聴し、昨今の世界情勢を鑑みれば、戦禍のないところで子育て出来る、衣食住の心配なく子育て出来ることがどれだけ有難いことかがよくわかる。

「ああ、ウチのシンはぷくぷくと育っている。こんなにムチムチなのだから保育園でもたくさん食べているはず。私、すごく間違えてた!反省!

と、ならないだろうか。

などと、シンちゃんのおばあちゃんが、深く反省しているところを妄想して憂さを晴らすのだった。