ココから先には入らないで、という話。

パーソナルスペースというモノは、0才クラスのお子さまたちはおろか、老猫にもあるということを、一緒に過ごしていてつくづく感じている。


そしてさらに、パーソナルスペースの広さに関しては、女の子の方が、相手との関係性に、より大きく依存するということも感じている。


そこに男女のすれ違いも生じやすいのではないか、という気がしている。


ソルとルナを見ていてもそうだ。


この2匹はいつも、ソルがルナの半径50センチ内を侵したところで戦いを始める。
そういうルールでも作っているかのようである。


毎回そのパターンなのだから、いいかげん
「意味もないのに近づくと怒られる」
ということを学習しても良さそうなのにソルはそのことに全く気づかない。


爪で引っ掻かれたり、猫パンチをされたりしても、
「ボクは今、一体どうして怒られたんだろう…」
という表情で呆然としている。


ヒナちゃんとユウタくんもコレと似た関係性である。
2人は0才組のクラスメートだ。


ユウタくんはヒナちゃんが大好きだけれど、パーソナルスペースをわきまえず、怒られてばかりいる。


この前も、ヒナちゃんと先生でギッタンバッコンを楽しんでいたら、真ん中に割って入って「バッコン」の時に、思いきり幸せそうにヒナちゃんにもたれかかった。

おかげで、ヒナちゃんの
「イヤーーー!」
という絶叫が部屋中に響いた。
もしも間に入ってきたのがカナちゃんだったら、ヒナちゃんは絶対に歓迎していた。


並んで座る時も、ヒナちゃんの横には既にカナちゃんが座っているのに、3センチくらいしかスキマがないトコロに無理やりお尻を押し込んで座ろうとして、2人を怒らせた。


ユウタくんは、まだカナちゃんほどにはヒナちゃんから認めてもらえていない。

それなのに、何度そうされても、懲りることなく平気で近づき、怒らせている。



ソルの振る舞いについては、動物病院の先生にも相談した。

先生はため息混じりに、

「ルナちゃんは長毛のメスだし、おばあちゃんになってから受け入れるのはムズカシイと思います………でも実際、テレビやSNSで見かける映像のようにはいかないご家庭の方が多いと思います。
猫ちゃんって基本的に1人でいるのが好きなので…」

と、慰めてくれた。


そうこうするうちにソルの入院。

ルナは鼻歌でも歌い出しそうなほどご機嫌で、いつも出し惜しみしている愛嬌をこれでもかと振りまいた。

四十九、老猫の退院前なのに心配するどころか文句が止まらなくなってしまった飼い主(私) - onoesanと猫と保育となんやかんや。

それが先月の初めのことである。


そこから1ヶ月半。
どうもここ1週間程度の短い期間で、2匹の関係性が変化したような気がしている。

ソルが目の前を横切っても怒らない。
昨日は耳のニオイをそっと嗅いだりしていた。

目を疑う光景なのである。

何があったのだろう。

一番景色の良い窓際を譲ってくれたとか、先に寝て布団を温めておいてくれたとか…?

いや。

多分、ルナは諦めたんだろう。
ソルのこの、気づかない性格はもう治らない、と。

何度もパーソナルスペースにズカズカと入りこまれているうちに、もうどうでもいいや、と。

1年と1ヶ月かけて「気に食わない同僚」あたりのコトバが一番ピッタリくるような関係性に落ち着いてきた。

ソルのやり方は正攻法ではないが、2匹の関係性は歩を進めた。



相変わらず、いつも離れた場所にいる。
グルーミングをし合うことなど到底考えられない。

でもここまで距離を近づけることが出来たのだから、今後どうなるかは全くわからないと思う。


そこまで仲良くなるのが先か、寿命が尽きるのが先か、今のところ五分五分である。

ちなみに、ヒナちゃんの猛抗議はルナの比ではないので、ソルと違ってユウタくんは、遅かれ早かれ「距離をわきまえる」ということをキチンと学ぶだろうと思っている。