学校に行きたくない日は、段階を踏んで体調の悪さをチラチラとアピールしていき、そのアピールに耐え切れなくなった私が、
「今日そんなんで学校行けるの?」
と言うのを待っている。
そんなムスコだ。
昨日は、そんな面倒くさいコトをする必要のない日曜日。
なのに朝、わざわざ2階から降りてきて、
「体調が悪いのでもう少し寝ます。」
と言い、静かに寝室に戻って行った。
様子がおかしい。
ですます調だったのも不気味である。
で、熱を測ったところ、案の定40.4度だった。
コロナだ…。
申し訳ないが、真っ先に思い浮かんだのは、もうマイちゃんに会えないのか…というコトだった。
保育園で。突然の引っ越し話は断らせて欲しいという話。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。
抗原検査キットは発病後すぐに検査しても陰性になると聞いていたので、夜まで待った。
満を持して検査をしてみる。
結果、陰性。
陰性なのに高熱…。
頭の中がなぜかうっかりコロナになり過ぎていた。
迂闊だった。
閉店間際の薬局に飛び込み、インフル両用キットを何とか購入することができた。
果たしてインフルエンザ、陽性。
タミフルは発病後に出来るだけ早めに服用しなければ薬効は期待できない。
抗原検査のタイミングに気を遣っていたら、タミフルを飲むベストタイミングを逃してしまったのだった。
外は既に暗いし、手持ちのカロナールもある。
救急にお世話になるのは見合わせて、自力で治す方向にした、
今朝になっても高熱は下がらなかった。
通常インフルエンザで学校を休んだ場合は、休み明けに病院名や診断日を記入して学校に提出しなければ出席停止扱いにしてもらえない。
が、今回は病院にかかっていない。
学校に聞いてみると、学校でも初めての事例だった。
教育委員会に問い合わせてくれた結果、両用キットにより確認、で良いとのこと。
不登校で出席数が足りない時に使えてしまいそうではあるが、それならと、ひたすら家で安静にすることにした。
昼になっても高熱は下がらない。
そのうち変なコトを話し始めた。
「お母さん、おにぎりになったの?」
高熱にうなされた中学生にこのセリフを言われたらゾッとする。
しかし幸いなことに、私も小さな頃に発熱して、母親の顔がおにぎりに見えたことがあった。
母親の顔がおにぎりに見えたことのない人たちに比べたら、圧倒的に冷静でいられた。
しかも私はムスコが小さな頃に、長新太さんの「へんなおにぎり」という絵本をさんざん読み聞かせしている。
奇妙な世界観に耐性があった。
その絵本では、雲が手の形になって、山やビルを次々におにぎりに変えてしまい、最終的にはママの顔をおにぎりにしてしまう、という展開になっている。
ムスコは思い出の本として、真っ先に「ぐりとぐら」を挙げ、次に「しろくまちゃんのホットケーキ」「ねずみくんのチョッキ」などが続く。
が、実際にはそういった神的な人気を誇る永遠のベストセラーだけでなく、「へんなおにぎり」「ぐぎごさんとふへほさん」、せなけいこのおばけシリーズなどのシュールな絵本もさんざん読み聞かせている。
深層心理に深く刻み付けられていたに違いない。
高熱でうなされ、変なうわごとを喋り出したムスコの隣で、うっかり遠い目をして思い出を懐かしんでしまった。
ばかりか、どれどれと絵本まで探し出して読み耽ってしまったのだった。
大変申し訳なかった。
しかしさすがの中学生、若さでググッと熱を押し下げ、幸い今はかなり楽になった様子である。
数時間前、私の顔がオニギリだったことは残念ながら覚えていなかったのだった。