最近一気におしゃべりが上手になった2才のハナちゃん。
保育園での出来事を、毎日おうちでたくさん話すようになった。
おしゃべりが上手になったことが嬉しいし、保育園の様子が気になるママは、おうちに帰ってからハナちゃんのお話に真剣に耳を傾けているようである。
ハナちゃんのママが書いてくれる連絡帳を読むと、ママがインタビュアーさながら熱心に聞き、記入する様子が目に浮かぶのだった。
「今日は、バスやトラックが見える公園に行きました。
公園に入る時は、ぐるっと遠回りして、車が少ない道を歩きました。
ハナはみっちゃんと手をつなぎました。
給食は、おうどんを食べました。
みんなが"おかわりください"と言って、たくさん食べたから、足りなくなって、先生が給食室に取りに行きました…
と、言ってます。合ってますか?」
といった内容がつらつらと、虫メガネがないと見えないような小さな字でびっしりと書き込まれている。
最後は必ず、
「…と、言ってます。合ってますか?」
で終わる。
合っているだろうか。
昨日のことを必死で思い出す。
すると、さすがシナプスが伸び盛りのお子さま、完璧に合っているのである。
「全部そのとおりです!しっかり周りを観察して伝えることができるハナちゃんの成長が嬉しいです。」
と書いたところ、ママはその後も毎日、ハナちゃんの言ったことをすべて書いてくれるようになった。
そしてこの、最後を
「…と、言ってます。合ってますか?」
で締めくくるスタイルは、ハナちゃんのママの中で定型化された。
「梅の花がキレイだね、って先生が言いました。
花びらがたくさん落ちていたからみんなで拾いました。
『ハナちゃんは、たくさん拾えたね。
持っていると、みっちゃんと手をつなげないね、どうしようか?』
と、先生が言ったから、ハナはポケットに入れて保育園に持って帰りました…
と、言ってます。合ってますか?」
フンフン、合ってます合ってます。
なんだか嬉しいな。
ハナちゃんはもちろん、こんな風に小さな字で一言一句を大切に几帳面に書いているママも、愛情がヒシヒシと伝わってきてホッコリする。
そう思いながら、楽しく読ませて頂いていた。
昨日までは。
今日、午睡の時間に私の隣で連絡帳を読んでいたミタニ先生が、
「先生、書かれちゃいましたねー」
と笑った。
見るとそこには、
「先生が、腰が痛いから痩せなくちゃって言いました。
先生も一緒にお尻歩きをしました。
先生が頑張ったら、先生のズボンのお尻がピッてやぶけました。
後ろにいたリクトくんがビックリしました…
と、言ってます。合ってますか?」
…合っている。
正確に言えば、リクトくんはビックリしたというよりも面白がって大声で叫んだのだけれど。
ハナちゃんにはかなわない。
いや。
ハナちゃんのママにはかなわない、だろうか。
その日、実は靴下にも穴が開いていた。
気づかれずに済んで本当に良かった、と心から思ったのだった。