風が強く吹いていようが、花粉が大量に飛散していようが、いよいよ腰痛が我慢できないレベルに達しつつあろうが、晴れていればお散歩に出発する。
行かないと主任に怒られるから
とか、
がっつりお昼寝してもらってキチンと休憩をとりたいから
ではない。
お子さまの心身の健康を育むためである。
何かにそう書いてあった。
でも今日はちょっと行きたくないな、という日は誰にだってある。
[保育園で。保育士だってイヤイヤ期には苦労する。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。
今日は1才のトモちゃんだった。
トモちゃんは、色白のぽっちゃりした女の子だ。
ただでさえ、たくさん歩くのは苦手なのに、今日は向かい風が容赦なく吹き付ける。
帽子は脱げそうになるし、髪の毛は邪魔だし、出発した時から既に涙目だった。
公園に行く途中で、とうとう座り込んでしまった。
少し前ならカートに乗ってもらったけれど、進級が近い今はもう、カートは持ってきていない。
歩くより他ないのだった。
行きはどうにか持ちこたえた。
公園でバスごっこをしよう、という案に乗ってくれた。
でも帰りは大変だった。
ツカレタ、ネムイ、ハラヘッタ…
アタチはもうムリ…置いていってチョウダイと地面にへたり込む。
へたり込んだ時に、膝に小石が当たってしまった。出血はしなかったが、コレは痛い。
もう完全に気持ちが折れてしまったのだった。
あたりは住宅街。
立ち止まったまま泣き続けてしまったら、また保育園にクレームが来てしまう。
こういう時はもう、どんな方法でも良いので、とにかく立ち上がってもらう。
立ち上がったら間髪入れず、即座に、リズミカルに歩き出してしまう。
考えるスキを一切与えず、すぐに発進してしまえば勢いに乗ってそのまま進めることが多い。
この時も、常日頃繰り返している、
「立〜てよ、ホイッ!!」
を、リズムに乗って高めの声で言い、うっかり立ち上がったところをすかさず歩き出す。
保育園では禁止されているアニメのテーマソングを、ここぞとばかりに小声で歌う。
トモちゃんの大好きな"はなカッパ"のヤサイシリトリの歌は家で練習してマスター済みだ。
コレにより100メートル程度は歩を進められただろうか。
しかし保育園が見えてきたあたりでスローダウンしてきてしまった。
もうダメだ。立ち止まる…そう思った時。
まさに我が家にある絵本のタイトルと同じ。
「ふんふん なんだかいいにおい」
強風のおかげで、保育園の給食室からカレーの香りがここまでやって来てくれた。
今日はカレーだったのか!
助かった。
迂闊にも、最強のカードが手札にあったのに気づかなかった。
声をかけるまでもなく、その香りに気づいたトモちゃんの瞳には既に力が戻ってきていた。
キラキラとした目で私に笑いかける。
「カエエ(カレー)?」
嬉しくて笑いが止まらないトモちゃん。
トモちゃんは保育園のカレーライスの大ファンなのだ。
「せんせい」よりも先に「カエエ(カレー)」を言えるようになった。
これはもうゴールしたも同然だ。
しかも保育園のカレーライスはとても美味しいから私も嬉しい。早く寝かしつけねば。
トモちゃんと意気揚々とお部屋に入る。
そこで気づいた。
カレーライスではなくカレーピラフだったことを。
トモちゃんも、気づいた。
彼女は一瞬、無表情になった。
が、すぐに、今日はコレでもうヨシとしようと割り切ったことが見てとれた。
そうだ、トモちゃん。
カレーピラフでもいいじゃないか。
目が合って、「まあいいか」という顔をし、それからすごい勢いでカレーピラフを2回おかわりした。
そしてあっけないほど簡単に寝てくれた。
おかげで、思いがけず早い時間にカレーピラフを食べることができたのだった。
カレーピラフは美味し過ぎて、これにより今週末の我が家のお昼ご飯も決まったのだった。
※これはあくまで私の体験談をベースとした話です。保育方法をはじめとする諸々は保育園によって千差万別です。