PTA活動もムズカシイ…という話。


先日、中学校で今年度最後のPTA会議があった。


最後なので1人ずつ順番に感想を述べていく。


謝恩会係の委員長さんだった。


同調圧力への反発心がヒトよりやや強めの私のアンテナに引っかかる発言をした。


「わたしたち謝恩会係はすごく仲良くなって、
チームワークも最高だったんです!
とっても大変だったけど、みんなで協力してすばらしいコトが出来ました。
皆さんに是非ご覧になって欲しくて今日は作りかけですが、持ってきちゃいました!!」

と、素敵な笑顔と共に発表が始まった。



委員さんが紹介したのは、

先生たちの似顔絵の描かれた手作りのクッキーと、ラミネート加工された押し花の表紙の中には、各クラスごとに担任の先生に宛てた生徒からの寄せ書き。
 


その場にいた若い女性の先生が


「すごーい」


と、大きな声で言った。


「私、これ欲しいです!3年の先生たち、いいなあ!」


と羨ましそうに続ける。


他の役員の人たちも

「すごーい!」

と、口々に称賛する。


私も、"すごい"ことは間違いないため、(すごーい…)と、心の中で思った。


ひょっとしたら声に出して言ったかもしれない。



拍手しそうな雰囲気すら漂い、発表した謝恩会係の委員長さんの鼻は膨らむ一方だった。



こんな書き方は意地悪めいているが、観察した結果、実際に鼻が膨らんだように見えたのであって全然悪気はない。



むしろ個人的には可愛らしくて、お友だちになったら楽しいタイプの、愛情豊かな雰囲気の人だ。



しかし私は内心、その発表を苦虫を噛み潰したような心持ちで聞いていた。



30代の先生と違い、校長先生と教頭先生は微妙な角度に俯いて微笑んでいた。



ひょっとしたら私と似たような思いでいたかもしれないし、称賛した人の中にも私と同じ気持ちだった人がいたかもしれない。



今年度、私は、校内美化委員の副委員長として、やらな過ぎるくらい最低限の活動しかしてこなかった。



美化委員さんの中には、

「みんなで何か企画して頑張れば、思い出に残るような楽しいことが出来ると思う。」

などと、やる気のある発言をした人もいたし、その発言に対して、時間のかかる面倒なことは一切やりたくないと私に打ち明けていたはずの委員長さんも、

「そうですよね!出来ますよね!」

と笑顔で答えていた。


でも私ははっきりと言った。


「PTAはボランティアという名目だけれど、現実は義務です。
やりたくないヒトが混ざってます。
活動は最低限にしたいと思っています。」


頷く人が多かったことに後押しされ、宣言どおり、最低ラインのことだけをして1年を終えた。



実際、この手の活動は、やったらやったで楽しいことがたくさんある。

お母さん同士で仲良くなれるし、気分転換にもなる。大変だけど終わってみれば楽しかった、と思うことも多い。

そんなに深く考えずに、たとえ大変に感じても、波風立てずに1年が終わるのを待てばいい。


ただ、今年何かやったら、来年もまた何かやるのが当たり前、という雰囲気になるのは間違いなかった。


何かそれが、こういう団体の宿命かのように。


"私たちの代は…"という圧力が、年々積み重なっていく。


内部に入らないとわからない、押し付けの、"みんなで集う意義"みたいなもの。


だから、その手作りのクッキーを見た時に、自分の勝手な正義感ヅラした気持ちがムクムクと湧き出てくるのを意識しないではいられなかった。


そうして、その場の雰囲気にふさわしくない思いにフタをすべく、このクッキーを作るのは一体どんなに大変だっただろう…と想像することに意識を集中したのだった。


少しのモヤモヤを抱えながらも、あとは帰るだけだった。


けれど、帰りがけに寄ったPTA室で見た光景は、そういう正義感のような気持ちじゃなくて、悲しいのと腹が立ったのと、両方が一気に押し寄せた。


「せっかくの新しい試みなのに、寄せ書きを出さない子がいて…。このままじゃ間に合わない…」

と、名簿を片手に疲れた顔のお母さんがボヤいていた。


名簿には、名前の前にバツ印を付けられた子が数人。


他のクラスの名簿も、PTA室に入れば誰でも見えるところに無造作に置かれていた。


いやいや、これは単に便宜上だから…と、わかっているのに、そのバツ印はとてもイヤだと思った。


そして勝手に一連の行動を全部重ねて、

こういう無神経さでPTAを大変にしていくんだ…

と、無理矢理さっきの彼女の発表とくっつけて腹を立てた。


寄せ書きをするしないは、15才の本人たちに委ねて欲しかった。


親が主導した先生への寄せ書きってなんだろう。


卒業を控えて、全員が希望でいっぱいの晴々とした気持ちとは限らない。

体裁よく何か一言を書けるほど成長していない子もいるかもしれないし、先生に感謝する余裕を、今は持てない子もいるかもしれない。

思春期だもの。そういう年だもの。


寄せ書きを勝手に企画して、どんな事情を背負っているかわからないその子たちの名前に、たとえ便宜上でも、決して知られることではなくても、バツなんて付けないで欲しい、と、それは別の話だと頭では理解しているのに、腹が立ったのだった。


でも、お裾分けにと頂いた手作りのクッキーはとてもおいしくて、PTA活動はムズカシイし、自分もまだまだめんどくさいな…と思ったのだった。