サラバ、田中。

庭に、アンガールズの田中そっくりの木が生えている。


それを今日、半分に切った。


ヒョロ高く、細い枝が四方八方にビョンビョンと伸び散らかしていて、ちょっとした風にもフラフラと踊る。


一昨年の春、"蜜蜂の分蜂"の知識がなかったばかりに丸裸にしてしまったその木は、それ以降ますます貧相な雰囲気を漂わせるようになってしまった。


庭師さんいわく、鳥のフンに入った種子が発芽した類の"意味のない雑木"ということで、名前もわからない。

花も実もつけたことがない。


意味のない雑木他、庭木の意見イロイロ。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。


トップはハゲており、真ん中だけ細い枝が密集、下の方に細長い枝が情けなさそうにヒョンヒョンとまばらに生えている。


たとえプロの手にかかっても、見栄えを良くするのは難しいだろう。



庭を眺めると真っ先に目に飛び込んできて、そのたびに

「不細工だなあ」

としみじみ思う。


ただそれは、人間の勝手極まりない美観というもので、この3メートル近い雑木はとにかく鳥や虫に愛されている。


メジロシジュウカラヒヨドリムクドリ…昨年はガビチョウやハトまでが飛んできて、その木で遊んだり歌ったり休憩したり、ウチのネコを挑発したりしていった。


だから今まで、庭木という立場からすると目に余るほどに不格好だが、そのままにしておいた。


しかしこの季節、桜はもちろんのこと、ボケや木蓮ハナミズキなど美しい木々が咲き誇り、鳥たちを誘惑する。


この時期だけは鳥が来ない。

そしてもう少し経てば、また蜜蜂が来る可能性がある。


ー田中と決別するなら今しかない。


そう思い、今日3メートル近くあったのを半分に切った。


ド素人のおばさんが、直径10センチを超える生木をノコギリで挽くのは結構骨が折れる。


脚立にのぼり、覚悟して挽き始めたが、驚くほどアッサリと刃が入っていってくれた。


倒してから枝葉を取って行く時にも、とても従順に解体に応じてくれた。


なんとも腰の低い、無抵抗な木だった。


頑固な木だと、こちらも無傷では済まない。


ノコギリの刃を受け入れてくれなかったり、枝に突き刺されたり、トゲがあったり、電気虫を飼っていたり。


田中は優しくて、本当に良い木だった。


ありがとう、田中。


サラバ、田中。


とは言え、下半分の太った幹は残っているため、そのうちまた懲りずに枝葉を伸ばすかもしれない。


爆笑問題寄りの風貌になった田中に、鳥たちは気づくだろうか。


様子を見守りたいと思っている。