先週、思いがけず有料道路に乗る機会があった。
スーパーからの帰り道で有料道路に乗ってしまった話。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。
普段は有料道路を使う機会はほとんどない。
だから、先月我が家にやってきたばかりの新車にとって、それは初めての体験だった。
私自身、有料道路に乗ったのは想定外のことだったので、事前に彼(新車)に伝えることはできなかった。
仮に乗る予定がわかっていたところで、どう伝えて良いのかわからない。
でも、この1ヶ月の彼のやる気とか、頭が良いと思い込んでいなければ出来ない"上から目線"とか、こんなに静かに動いたり止まったりできることとか、優れたところをたくさん見てきたから、何かしら直接伝えることが出来れば良かったのだと思う。
と言うのも、有料道路に乗ってからこのかた、エンジンを止めた後にディスプレイに表示される運転評価の点数が一気に辛口採点になってしまったからである。
「この前はあんなに燃費良く走れたっていうのに、どうしてまた元に戻っちゃったんだよ!
ダメだダメだ全然ダメ。キミはこんなところで満足するヒトなの?」
と、優しい言葉をかけてくることもなくダメ出しを連発するので、
「いや、あれは信号がない道路だったからだよ。
単純にいつもの道路の時と比べるなんて、むしろそっちの方こそ、らしくないと思う。」
と、ぶっきらぼうに返す。
返しながらふと、そんな風に互いをリスペクトし合う会話(妄想)を交わすようになったんだな…そういう関係性になってきたんだなと…自分自身驚いたのだった。
慣れない有料道路に2人で乗ったことで、否が応でも仲が深まったようである。
それまでは、前の車に対する罪悪感も引きずっていたから、まだまだ心を許すことは出来ないなと思っていたのだ。
納車日に色々葛藤したという話。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。
そんなわけで、ここに来てとうとう、ある思いに行き着いた。
ずっと考えていたが、そろそろ一歩踏み出してみようか、ということだ。
何かというと、そう。
ー皆さんは、自分の携帯を躊躇なく他人に見せられますか?
私は絶対にイヤ。
家族でも見せたくない。
見せて良いのはルナとソルだけである。
ソルは、見てもどうせわからないから見ても良い。
ルナは私にとって、隠し事をする必要が一切ない間柄の、唯一無二のネコのため、見ても良い。
で、今回、新車が我が家に来てから1ヶ月半。
今回の件を踏まえて、そろそろこの黒くてゴツい車にも、多少は自己開示してもいいかな…と思い始めたのだった。
有料道路を降りた後に道に迷ったというのも大きな理由である。
現実的に、そろそろ地図も表示してもらわないと不安だ。
そこで本日とうとう、スマホを新車に接続して、中身を見せてやったのだった。
すると彼は大興奮で、スマホを介して矢継ぎ早に、(Siriに)こんな風に話しかけて、あんな風に話しかけて、と、次々と要求する。
私が仕方なく言う通りに、
「Siri、今日の天気は?」
とか、
「Siri、地図を見せて。」
など話してやると、そのうち嬉しそうに、
「OK、もう君のことはわかったから」
などという雰囲気を醸し出してきて、そうしていきなりのことだった。
ディスプレイに私のスマホの中身をさらけだしたのだ。
いきなりのことでショックだったけれど、その時にもう、本当に、わかった。
前の車より圧倒的にカッコイイかもしれない。
でも、
「カッコイイから当然っしょ?」
と、黒いボディをあっという間に汚して、毎日のサッと拭きを当然のことのように享受しているトコロ。
危なくなりそうな時にすぐに教えてくれるのは優しさかもしれない。
でも、必要以上にデカい声で繰り返し、しつこく言うトコロ。
今回のことでよくわかった。
デリカシーが圧倒的に足りない、ということが。
キレイに拭いてもらって当然と汚れまくったり、相手が間違っているからって指摘しまくったり。
ほら、こんな短い会話でもうキミのこと、ぜ〜んぶわかっちゃったよ、と言わんばかりに表示されたことで今回、彼が本当の賢さとはどういうものかを全然わかっていないことが明らかとなった。
そうじゃないよ。
そこが全然、わかってない。
こんなに優秀なのにもったいないことである。
圧倒的な能力を持つ彼は、それが故に、前の車のような"口に出さない優しさ"が足りないのだった。
それは、優秀な彼の致命的とも言える欠点である。
だがその欠点を全てカバーしてしまうようなチャームポイントが彼にはある。
本当のことを言えば、初めて乗った時から魅了されている。
ウィンカー音。
ダメ出しの多さに辟易としても、この音を聞くと怒る気になれない。
まるで掛け時計のような、はたまたメトロノームのような、チッコカッコチッコカッコと図体によらずとても軽やかな音を出す。
昔のウィンカー音と言えば、リレー回路のa接の金属板の音だったらしいが、今はもう自由自在のお好み次第だ。
これはもう設計者が、頭でっかちになりがちな彼とドライバーとのこうした確執を解消するために、ギャップ萌えを狙って設定したのではないかと疑っている。