猫のゴロゴロ。

猫がソファーの上に寝そべりゴロゴロと喉を鳴らしているのを見つけると、心の底から幸せな気持ちになる。


今やすっかり聴き慣れたこの音は、この15年間、心の安寧を保つことに大きく貢献してくれている。


猫を飼い始めるまでは、かろうじて触ったことがあるという程度。


どちらかと言えば苦手で、犬の方が断然可愛いじゃないか、と思っていた。

ネコはキライだったという話。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。


だから、紆余曲折あって猫を引き取りに行った帰り道、車の中で始まったゴロゴロ音にはまるで気付かなかった。


主人は実家にいる時に何匹も飼っていたから、

「ほら、ゴロゴロ言ってる。聴こえるでしょ?」

と、嬉しそうに言ってくる。


耳を澄ませると、確かに小さな猫から低音の、ノイズのような雑音が聴こえてくる。


ーこれが猫のゴロゴロってやつなのか。


半信半疑だったけれど、その日以来、家にいる時は毎日欠かさずこの音を聴かせてもらえることになった。


ちっこいネズミ色のマリモの頃から、ふさふさのモップばあさんの今に至るまで、私はこの音を毎日毎日当たり前に聴いている。


そこに関しては割と気安く、撫でれば比較的すぐに音を出してくれる。


ゴロゴロ音は、今や日常を構成する音の一部となり、潤沢で、尽きることのない類のモノという認識になってしまっている。


ソルが出戻って来たため2匹体制のゴロゴロ音になったから、余計に簡単に聴くことができるようになった。


意志のある、楽器のようなのである。


機嫌が良いとあからさまに音量が上がり、その気にならなければ一切鳴らない。


頑として鳴らなくて、壊れてるのかなと心配になるような日もある。


気まぐれなのだ。


猫のゴロゴロは、疲れた心を休めてくれるのはもちろんのこと、骨に良いらしく骨折が早く治るとか骨密度を上げるとか。

メンタル的な疾患や不妊症にまで効果があるなんて話も聞いたことがある。

そう言えば我が家も長い間出来なかった子どもが、猫がやって来た翌月にやって来たのだった。


クスリのような医者のような。


ところでネコ本体は、自分の調子が悪い時にもゴロゴロと鳴らすらしい。


ヨタヨタとなった2匹が奏でるゴロゴロの音色に、いつもと違う何かがないか、探るように聴き入る。


この音を当たり前に聴けた日常を、いつか愛おしく思い出すんだろう。


当たり前のこの音が、1日でも長く聴けますように。