日曜日の昼下がり。
ソルが入院したら気が抜けてしまい、朝からテレビの前で寝転がっていた。
窓際で、同じように寝転がって二度寝を楽しんでいたルナに、寝転がったまま話しかけた。
「なんでこうも太っちゃうんだろうね…」
あくまでデリケートな、女同士の内輪の会話だった。
彼女も最近、私と同じく体重の増加が止まらない。
このところイビキがうるさいので動物病院で聞いてみたところ、たるんできたお肉が気道を圧迫しているのではないかと言われた。
お互い太り過ぎて困っている。
そんな我々のやりとりを主人に聞かれた。
なんとなく気まずく感じ、今まさに食べようとして袋から取り出した"ばかうけ"を差し出し、
「食べる?」
と聞くと、
「いや、いい。」
と言って、また我々をじっと見続ける。
いたたまれなくなり、
「さてと、スーパーに行かなきゃな」
つぶやいて席を立とうとすると、
「スーパーまで車で送るよ。買い物袋は預かるから帰りは歩いて帰ってくれば?」
と提案されてしまった。
「えー…それは…(いやだ)」
しかし、なんとなく断りづらい雰囲気の中、仕方なく2人で車に乗ってスーパーに向かったのだった。
買い物を終えて荷物を積み、自分もしれっと後部座席に乗り込むことに成功した。
やれやれ。
しかし、
「大通りは車が多くて歩きにくいから。どうせなら見晴らしの良い道を歩いた方が良いでしょ。」
と、またしても提案をされてしまった。
そうして車は大通りを越えた。
主人はいつになく聞き上手であった。
こちらの話にフンフンと相槌まで打つ。
気分が良くなってベラベラ喋りまくった。
こんなに満足するまで話を聞いてもらったのはいつぶりだろうか、と満足感に浸っていると、
「着いたよ。なんか困ったことがあったら連絡ちょうだい。」
ほら降りて降りて、という雰囲気に呑まれて降りた瞬間に、車は走り去っていった。
ーここ、どこ?
文明の利器で確認、我が家の最寄駅から5駅離れた駅の近くであった。なんでこんな目に。日曜の午後に何かの罰ゲームなのだろうか。
それでも良い天気なのでテクテクと歩き出した。
遠くの山並みが美しいし、住宅街を"お宅拝見"しながら歩くのはなかなか楽しい。
足がジンジンしたけれど、思っていたよりは悪くない。
ただ、遠い。歩けども歩けども道は続く。
面倒くさくなってテキトーに歩いていたら、もうどこを歩いているのかまったくわからなくなった。
しかし、2時間近く歩いていると徐々に見覚えのある風景があたりに広がり始めた。
もう少しだ。もうクタクタである。しかし喉が渇いた。
ようやく帰宅すると、一も二もなく冷蔵庫に向かい、(第3の)ビールを2本、一気飲みした。こんなにおいしいビールを飲んだのはいつ以来だろう。
お腹が急激に空いてきた。
奇跡的に昨晩、豚の角煮を作ってあった。
昨晩の自分を抱きしめてやりたい。
3本目のビールを取り出し、角煮と共に堪能した。
味の染みたゆで卵は最高にビールと仲が良かった。
外はまだ夕暮れ。
ほどよく疲れた体に染み入るビールと豚の角煮。
歩いて良かった。主人の提案に感謝した。
角煮をすべて食べ終え、アテが足りなくなって冷蔵庫の中を物色していると、出かけていたらしい主人が帰ってきた。
なんだか複雑な顔をしていたけれど、私はまた歩いてもいいなと思っている。