しつこく続く老猫の話

閉院の30分前に、ギリギリで動物病院に駆け込んだ。


この時期は狂犬病のワクチン接種の時期と重なるので、いつもはイキの良い元気なワンちゃんでごった返しているのだが、珍しくネコ率が高かった。


ネコの場合は元気であってもなくても、ケージの中にいるのでわからない。


わからないので飼い主さんに聞いてみる。


初対面でも話しかけるのには2つ理由がある。


ひとつは情報交換。


もうひとつは眠気を蹴散らすためだ。


以前、待ち時間にあまりの眠気に耐えきれずに爆睡してしまった。
あれは恥ずかしかった。


息子が骨折して整形外科に連れて行った時にも寝てしまったが、あの時は息子が起こしてくれた。


老猫ソルは温かく見守っているだけで決して起こしてくれない。


でも私1人じゃ到底立ち向かえないほどの狂気にも似た眠気。


回避策としての声かけ運動だ。コロナが落ち着いて良かった。


老若男女かまわず、1人で来ている方だったら話しかけている。迷惑そうにされたことはない(主観です)。


初対面の犬猫、そして飼い主さんとの出会いは絶大で、眠気で倒れそうな時間が一転、とても楽しい気分転換のひとときとなる。


今日たまたま隣にいたのは18才の雑種チーちゃんと、その飼い主さん(男性、推定40代後半)だった。


チーちゃんは最近腎臓を患ってしまったけれど、それまでは病気知らずだったそうで、飼い主さんは、


「チーは本当に良い子で、ずーっと良い子で…なぁ、チー。」


と、今にも涙ぐんでしまいそうな声でチーちゃんにそう話しかけるのだった。


あまり良い状態でないことが察せられる。


鳥に付けそうな名前のネコを、ケージの隙間からそれは大切そうに何度も何度も撫でていた。


その飼い主さんの隣に座っていた、黒猫をケージに入れたおばあさんも話を聞いていたようだ。

突然、感極まった様子で参加してきた。


「あなた、それはいい子よ。本当にいい子だよ。ウチの前の子と同じくらいいい子!」


と、チーちゃんを絶賛した。その方が以前飼っていた子は病気知らずで、20才を超えたある朝、目が覚めたら隣で眠るように息を引き取っていたと。


あー、確かにそりゃいい子だわ…と思わずにいられない。


その定義でいくと、ウチのこの老猫ソルはもう、はっきり言って超ワルい子、と言って差し支えないだろう。


超ワルい子はまだまだ懲りずに心配とお金をかけるつもりでいるのかもしれない。


本日、体重が10日間で400g増えていることが判明した。


これは例えば50キロの人で換算すると、10日で60キロになるような状況である。


自分に置き換えたら恐怖というか悪夢というか、太ったのがネコの方で本当に良かったと胸を撫で下ろしている。


今の私であれば、増やそうと思えばこのくらいすぐに増やせる気がするので身に迫るものがある。
恐るべき中高年の低い基礎代謝量。


見かけによらず超ワルい子のソルに仕える日々がどのくらい続くのかまるでわからないので、中高年である以上は今すぐに寝て、体力回復に努めようと思うのだった。