ひどい寝不足になってしまった。
体力の衰えた人間にとって睡眠は一番、ほんっとーに一番大切なことなんだと身に沁みたのだった。
睡眠による復活能力が年々衰えている以上、一定量の睡眠をとることは、身だしなみなんかよりずっとずっと大事なことだと深く反省することをしてしまった。
車で走行中に、落ち度が(そんなに)ない他人に当たる(物理的にではありません)という最低最悪の振る舞いをしたのである。
片道2車線の大通りの左車線を走行中に、前を走っていたバスがバス停に停車したので、スピードを少し上げて車線変更した。
そうしたところ、右車線の、本当にちょうどスッポリとバスに隠れてしまっていた位置に、右折しようと停車している車がいたのだった。
あやうくぶつかるところだった。
トランクに積んでいた荷物はすべて倒れて中身がぶちまけられた。
幸い心臓は止まらなかったけれど10本くらい白髪になったと思う。せめて白髪の言い訳にさせてもらいたい。
問題はそこからだ。
もう少し右側に寄れるのだから寄れよ!とか、二車線で右折は混んでない時だけでしょ!などのツッコミをドライブレコーダーに聞いてもらうくらいは許してもらえるかもしれない。
それがあろうことか、ビーーーッと思いっきりクラクションを鳴らしたのだった。
自分に驚いた。
見えなかったのは運の悪い偶発的な出来事で、右折するのは危険だけど違反ではないし、幸い髪の毛が10本白髪になっただけで済んだのだから問題は何もなかったのだ。
なのに、もう終わってんのにクラクション鳴らすって。
こんな人はイヤ過ぎる。自分のことだ。
長過ぎる前置きだが、すべては寝不足のせいだと激しく反省したのだった。
寝不足の原因は、本である。
古市憲寿の「奈落」
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この人、よくテレビで見かけるし、芥川賞の候補だったし、一度くらい読んでおこうかな…とたまたま思いつきで手に取った。
実はその前に短編なら読んだことがあったが、まったく良さがわからなかったので再チャレンジだった。
今更だけれど、どうせなら候補作の方を読めば良かった。
というのも生まれてこの方、ここまで胸くその悪い(失礼しました)読後感が最悪な本は初めてだったからだ。
読み終わった瞬間、やってくれたな!時間を返せ!と思わず床に叩きつけてそう叫びたくなった、生まれて初めての本である。
著者自身、自分の身に起きたら1番イヤなことを詰め込んだ…という趣旨のことをインタビューで話していたので、こう書いても問題がないどころか、読了直後の反応としては、これが作者の意図どおり思いどおりの理想的な反応なのかもしれない。
読み終えたのが0時ちょっと過ぎで、それからすぐに寝ればリカバリー出来たのだが、とてもじゃないけどそのまま目を瞑ることなどできなかった。
何か口直しになる、爽やかで明るい話を読まないことには悪夢でうなされること間違いなしだった。
もともとネガティブな思考をしがちなこともあり、物語は勧善懲悪とまでいかなくとも、読後に何かしら前向きになれる要素を求めている。
じゃ、こんなタイトルの本を選ぶなよ!という話ではあるが、まさかここまで救いようがないとは。
嫌悪したくなるような登場人物のほぼ全員に、自分の影を見てしまったせいもあると思う。
とにかくタイトルをまったく裏切らない。
生活に絶望を感じている人がいたら、自分だいぶマシ、と思えるだろう。
皆さんの評価が気になり過ぎて、というか私に代わって作者にクレーム?をつけてくれている人はいないかと口コミをググると、評価がとても高くて驚いた。
世の中の人たちのことがサッパリワカラナイヨ…と呆然としてしまった。
ちなみに内容は、事故がもとで閉じ込め症候群(意識ははっきりしているのに、全身麻痺により一切の意志の伝達が不可能となった状態)になってしまった女性の話である。
本当にこれ以上の絶望は思いつかないエピソードがてんこ盛り。
私は物語を書いたことがないので想像すらできないけれど、書く人たちというのは、物語の中に入り込んで、主人公に少なからず感情移入するものだと思っていた。
でも仮にそうであれば、自ら進んでこのような状況にある人を主人公にした話を書こうと考える人の胆力、すごいなと思わずにいられない。
そして読んで数日経つ今、この話の主人公が自分の中に居座り続けている。
これだけ辛いことばかりなら最後はきっと大逆転するはずだと、ただただそれを信じて読み進めた結果が全然そうじゃなかったから、手放すことができないのだと思う。
このままでは気持ちが悪いので、少なくともあと一作、この人の本を読もうと思っている。
それにしても、これからは寝る前に読む本はちゃんと選ぼうと思った。
あー良かった!めでたしめでたし、おーしーまい!で、終われる本にしよう。桃太郎みたいなやつ。
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