おノエ、お金持ちから頼まれごとをする

 

onoesan.hatenablog.com

動物病院でお金持ちらしき女性と遭遇→→→車で家まで送る→→→お茶でも飲みませんかと誘われる→→→せっかくなのでと家にあがりこむ→→→ゴージャスな雰囲気にのまれる→→→女性の視線に、何か話したいことがあるらしいとようやく気付いた、onoesanこと私だった…

 

女性が、ようやく話ができそうね、という顔をして、私に尋ねた。

 

「あの、それで…さっき、車でお話しされてたことなんですけど」

 

(さっき車で?…なんか話したっけ?動物病院のことかな…。だとしたら大正解だよ!あの病院のことなら大抵のことは知ってるからね…もしかして棚に"今日の猫村さん"の1巻と2巻がないって話?それなら豆柴のハナちゃんの飼い主さんが、読んでみたいからって院長先生に頼んで貸してもらってるから来週には戻ってくるはず…でも絶対に続きが読みたくなるから、次は3巻と4巻が見当たらなくなるはず…あ、もしどうしてもすぐに読みたいんだったら私、貸しましょうか?ウチに全巻ありますから。面白いから超オススメですよ!…って、これ、ひょっとしてお金持ちに借りを作ることになっちゃうんじゃ…なんだかご利益がありそうな話になってきたね…フフ)

 

「あの、お気楽に働いてるってお話です。それは、シッターさんということでしょうか」

 

「(ああ、なんだ、そっちか…)そうですね、大体そうかな。でも本当に、お気楽に、なんです。はっきり言ってしまうと猫ファーストで。猫の様子によっては急にキャンセルしますけど、それでも良いですかっていう」

 

「家で赤ちゃんを見ていてもらえるってことですよね」

 

「そうですね…。いえ、ウチに連れて来てもらってお預かりする方が多いかな。それもやっぱり猫がいるけどそれでも良いですかって言って、それでOKしてもらった場合だけですね」

 

「赤ちゃんの家に行かれることもあるんですよね」

 

「そうですね、ご事情があればもちろん。でも、すぐに帰れるような距離のお宅だけですね。まったく、なんか、何様?って感じですよね〜、ほんっとお気楽!いや、実際のところ、お気楽に働いてる場合じゃぜんっぜんないんですけどね〜ほんっと困っちゃう…」

 

「ウチはそれでかまいません」

 

「は?」

 

「いえ。むしろそうして欲しいです、猫ちゃんファーストで。本当に、できる限りのことをしてあげてくださいね」

 

「はぁ…。(よくわからないけど)ありがとうございます…」

 

このタイミングで、なぜか赤ちゃんがウキーッと笑い出し、女性が「ね、いいよねそれで」と赤ちゃんに言った。

 

「本当にお気楽でいいんです。急な話で申し訳ありませんが、お願いできませんか」

 

私はこの時、世のおじさまたちが美人の頼み事に弱いという腹の立つ話を、実感として認識することができた。ここまでの美人に頼み事をされたのなんて生まれて初めてだ。なんか全身の細胞が喜びを感じている。なんなのコレ?こんなの絶対に断れない。これは確かに…。だって、こんなにキレイな人に頼られて、舞い上がらない人がいるのだろうか。さっきの調子じゃ、もしここにいるのがダンボの飼い主さんなら、今頃はもうイチコロだったろう。でも、でも、そうだよ、だめだめ。

 

「…ごめんなさい、でも、私…その…、やっぱりウチでお預かりしたいんです。特に赤ちゃんは絶対です!だって、だってこの子たち、寝るじゃないですか!なんならお預かりしてる間中、ずっと、ずーっと、ひたすら寝てることがあるじゃないですか!その時、ひとさまのお宅だとブレスチェック以外には何もすることもないのに、むやみに視線を動かすのも憚られるじゃないですか!何もしないでぼーっとしてるの、私、貧乏性っていうか貧乏なんで耐えられないんです!その上、最近の若い人って見守り録画とかするじゃないですか!いや、私のこと見たいんじゃないことくらいわかってますよ、監視のためだって。わかってるんだけど、っていうか私のところなんて、そうじゃなければむしろカットしたいんでしょうけど、なんか…フフ…照れちゃって。カメラ目線になっちゃったりなんかして、もう恥ずかしいったらないんです!!」

 

一気にまくし立てた。そして付け加えた。

 

「でも、だからと言って、お宅のようなお嬢さまをお迎えできるような家ではないんです。ですからちょっと…」

 

すると女性はフッと笑い、王手!とばかり、こう言った。

 

「わかりました。カメラは止めておきます。寝ている時はテレビを見ててもらっても良いですし、お茶やお菓子も出しておきます。お湯はポットに入っていますし、もちろん本をご持参頂いてもかまいません」

 

え!?そうなの?そんなことして頂けるの?そんな話、海外ならわかるけど日本じゃ聞いたこともないよ!そんなの、そんなの…最高過ぎるじゃないですか!!

 

…しまった、ニヤついちゃったかも。慌てて女性を見ると、こちらを凝視している。

 

…いや。でもやっぱりこんな話、おかしくない?大体どうして初対面の人にそんな大事なこと頼めるの?そうだよ、考えてみたらまだ、名前も、連絡先だって知らないのに。

 

すべて顔に出ていたらしい。

 

「とりあえず連絡先を交換してもらえますか」

 

言われるがまま、LINEを交換させて頂いたのだった。