動物病院でたまたま出会ったお金持ちの女性の家の、シッターをすることになった。
30代後半のお金持ち、と勝手に見積もっていた彼女は、40代前半のお金持ちだった。大人の女性の年齢を当てるのは難しい。
外見の若さに反して感じられた、貫禄というか余裕は、もしかしたら40年以上生きてきた経験値に寄るものだったのかもしれない。
一方、実際の年齢に反して感じられる、彼女の見た目の若さ…髪や肌の美しさなどは、お金の力によるところもあるのだろう。
シッターもハウスクリーニングもデフォルトで頼む予定だったとのこと、やはり階級の違う人だなと、最初は思った。でも、そうではなくて時代の変化なのかもしれない。子育ても多様化している。
この年で頑張って産んだのだからもう十分、必要ならどんどん人の手を借り、周りの人に育ててもらおうと思っている…そんな風に話す彼女は、肩の力が良い具合に抜けている。心の持ちようは、高齢出産と経済力の強みかもしれない。
とは言え、40代の初産は体の負担も大きい。人によってはハゲてしまうくらいだ。しかも、うかうかしているとあっという間に更年期に突入する。
実際のお預かりは、出会いから半月ほど経ってからスタートした。私のミッションは、この美女の、やんごとない姫の育ちをほんの少しお手伝いすることである。
頑張ろうじゃないの、と思っている。