年末のスーパーで祖父を思い出した。

晦日は買い物ナシで済ませようと、昨日までにひととおりの買い物は済ませておいた。

が、案の定の買い忘れ。

晦日、しかも数年ぶりのスキヤキ…。

めったにしないスキヤキだけに、春菊と椎茸を入れないと、ムスコに間違ったスキヤキのイメージが焼きついてしまうのではないか。

「え?ウチのスキヤキは肉と豆腐とネギだけだよ。」

「え〜?おまえんちショボッ!」

などという会話を想像してしまい、悔しいがスーパーへ行く。


春菊と椎茸は値段が倍になっていて、更に悔しくなったけれど、背に腹はかえられないので購入。

買い物を済ませて袋に詰めていると、お歳暮のチラシの横に、まさかの「恵方巻き」のチラシが並んでいる。

まだ「恵方巻き」のことなんて考えたくない。

お雑煮のことすら考えたくないというのに。


コレを早くも陳列したヒトは、いくらなんでも気持ちが急かされ過ぎていないか。

今日コレを手に取る人がいたら、その人とは、ちょっと仲良くする自信がない。
計画性のない私にイライラして怒り出すかもしれない。


でももしかしたら、来年(明日)は忙しくて忘れちゃいそうだから、今のうちに出しておこうと思ったのかも。

それならば、むしろ仲間だ。

私も歳を取るにつれて、忘れないように先に済ませることが増えてきた。

後回しにすると、確実に記憶から消えてしまうのだ。


そう言えば。

亡くなった祖父は晩年、12月になると、

「お年玉を配り忘れてしまうのではないか」

と、心配を始めた。


次第に、居ても立っても居られないほど心配になり、もう待てないと、クリスマスにはお年玉を孫たち全員に配ってくれた。


全員に配り終えるとようやく一安心。

ヤレヤレ、コレでようやく心置きなく忘れられると、お年玉を配ったことをキレイに忘れた。

そうして新年を迎えて、またお年玉を配ってくれた。

孫達は誰1人として、

「おじいちゃん、もうもらったよ。」

などと、祖父がショックを受けるようなことは言わなかった。

「おじいちゃんに返します。早く出しなさい!」

と、回収に走った母も、祖父に黙っていたに違いない。

母の一人勝ちだったな、と懐かしく思い出したのだった。