侵入者15.・出入り口の封鎖完了

約20万円の見積書を残して去って行った華丸さんは、数日後に電話をくれた。

「その後、いかがでしょうか?」

出入口を、いとも簡単に、しかもタダで見つけてくれた華丸さんには感謝してもし尽くせない恩義を感じていた。

でも20万円はデカい。

そこで、感謝の気持ちを精一杯伝えてから、駆除に関しては、しばらく考えさせてくれと言って受話器を置いた。
華丸さんは、残念そうな雰囲気を少しだけ滲ませながらも、さわやかに対応してくれた。

結果的に、最も重要な「出入り口を見つける」というミッションを果たしてくださった華丸さんに1円もお支払いしないのは申し訳ない気もした。

けれども数年前、華丸さんの勤める法人には、シロアリの予防処理&点検ってことで50万円をお支払いしているので、これでチャラにして欲しい。

ありがとう、華丸さん。

出入り口がわかったことは本当に大きかった。

子ネズミ一家がお出かけしているはずの昼過ぎに、出入り口の一帯にホイホイを設置した。

従って、他に入口がなければ、もしくは、留守番係がいなければ、もう家の中には入ってこれないので、子ネズミ一家はいないはず。めでたしめでたし、である。

実際、その後の数日間は気になる音がしなかった。
これは、もしかして、お引越ししてくれた??

もしも、めでたくお引越ししてくれたことが判明したら、そのタイミングでスカスカになっている出入り口〜和室の天井裏間に、発泡ウレタンをシュワ〜ッとやって、ひとまず作戦完了である。

が、まだ、家の中にいるのかいないのか、出入りが出来るのか出来ないのか、ハッキリとわからない。

ここで塞いで、万が一閉じ込めてしまった場合、
区役所の担当者によると、「一番マシな状態で、カピカピのミイラ」になってしまう。
カピカピのミイラになるとしても、ミイラ完成前に、また、主人の足を刺しまくった輩はたくさん現れるだろう。
それは絶対に避けたい。

というわけで、相変わらずハッカスプレーを撒きながら、夜は耳を澄ませて数日間を過ごした。

音は、本当に、まったくしなくなっていた。

頃合いだと判断した。
スカスカになっている外壁と内壁の間に、下から発泡ウレタンスプレーを突っ込み、思いっきり噴射した。勢いあまって地面にポタポタと液が落ちた。
ウレタンスプレーが固まったところはフカフカで、こんなのネズミならすぐにかじれそうで心配だった。
そこで更に念を入れ、木材を無理やり間に挟み込み、出入り口の封鎖作業を完了とした。

ゴールが近づいてきた。