ほんの時々、主人と散歩をする。

尿酸値が高くなってしまった主人は、以前のようには走り込めなくなった。


それで最近、散歩に誘うとまれにOKの返事が来るようになった。


だから、ほんの時々、主人と散歩をする。


出発して、最初の10分間くらいは並んで歩く。


その間、私はひたすら喋り続け、主人は多分、3分の1くらい聞いている。


そのうち、2人の間が少しずつひらいてくる。


それに気づくと、私は小走りする。


何度か追いつくことを繰り返して、そのうち諦める。


差はどんどんひらいていく。


主人は、私のペースが落ちていると言う。


全然わからないけれど、きっとそうなのだろう。


差はどんどんひらき続けて、段々と、どうでも良くなってくる。


もともと1人で散歩するつもりだったし、やっぱり自分のペースがラクチンだし。


そのうち、犬の散歩をしている人とすれ違う。


犬の散歩をしている人を見つけると、とにかく犬に熱心に視線を送る。


可愛いね。こっちにおいで。一緒に遊ぼう。


犬さえ来てくれたら、飼い主さんは大抵犬に「困った子ね、すみません」などと言って、触って良いですよというオーラを発してくれる。


犬がキチンと私の気持ちをキャッチして、尻尾を振りながらコチラに来てくれたらしめたものだ。


この前なんて、目が合った瞬間に走り寄ってゴロンとヘソ天してくれた。私の気持ちを全力で受け止めてくれてありがとう。


ヘソ天する子は、散歩をサボってゴロゴロする気満々だから私も一緒に散歩をサボって犬と戯れる。


すっかり満喫して再び歩き始めると、また次のお散歩ワンワンを前方に発見する。今度は2匹か、お楽しみも2倍じゃないか。


そんなことを何回か繰り返していると、米粒のように見えていた主人の姿はもう完全に見えなくなっているのだった。


だからこれまで、帰宅して家の玄関を開けるところまで一緒だったことはほとんどない。


そう言えば、結婚前に2人で買い物などに行く時も、よくお互いの姿を見失った。


あの頃は携帯もなかったし、待ち合わせして電車で出かけるような場所が多かったから、探すのが大変だった。


今は近所の散歩くらいしか一緒に行かないので、見失っても全然かまわない。


奇跡的に最後まで一緒に歩くことがあると、今日はなんて優しいんだろう、どうしちゃったんだろうと感動するし、主人は主人で、今日はよく頑張ってペースを保って、くじけず歩いたな、と多分私に感動している。


一緒に散歩をする。正確に言うと、散歩をするために一緒に家を出ている。