覚醒時間はオス猫の世話をしている。

昼間、中途半端にまとまった居眠りをしてしまうと、目が覚めてからしばらくの間は廃人のようになってしまい、人間に戻るのに時間がかかる。


若い頃からもともと「眠りたい」欲が人よりかなり強い。生まれついてのナマケモノだ。


しかし最近は、あらゆる欲求の中でも睡眠欲が突出し過ぎている。


一日中眠い。


日中、ほとんどの時間をボーッと生きている。


チコちゃんに叱られる


それでも眠気が止まらない。


今日の午後もそうで、気づいたらソファーで気持ちよくうたた寝してしまった。


目が覚めて完全に起きるまでの間に、あたりで色々なことがあった。


私の目が覚めたことに気づくまで、主人は隣のソファーで、時々声をあげて楽しそうにサッカー観戦をしていた。


それが、私の目が覚めたことに気づいた瞬間、口の中で舌打ちをしたのがわかった。


わかったのと同時に、部屋の中がクサイことにも気がついた。


オス猫が下痢をしたけれど、テレビから目が離せずに放置していた。けれど起きたからには片付けなければ。せっかく今、いいところなのに…ということのようだった。


まだ、「私がやるから大丈夫だよ」などという長いセリフを大きな声で言えるほど覚醒していなかったので、渋々と席を立って片付ける様子の主人を、目を瞑ったままの姿勢で感じていた。


片付けが終わったら、主人はなぜかテレビを消して部屋を出て行った。


私は起きない方が良かったのだろうか。


でも夜じゃないし。起きなければ。悪いけど起きるよ。


姿勢を少しずつ変えながら、起きる方向に進んでいく。


隣のソファーの端の方で、肘掛けに寄りかかって寝ている、可愛いメス猫が目に入った。


彼女の寄りかかる肘掛けに、少しだけスペースがある。


そこに、若干混み合ってしまうけれど移動して、頭を乗せた。


可愛いメス猫と肘掛けをシェア。頭がはっきりしてくるまで、ここで素敵な昼下がりを過ごそう。


そう考えて隣に行き、肘掛けに頭を乗せると、間近に見えた彼女の顔がギクリと引き攣ったのがわかった。


隣に面倒なのが来たことに気づいて、気づいていないフリをしている。目を合わさないように、固まっている。


その眉間を優しく撫でてみた。すると目を瞑る。でもゴロゴロは言ってくれない。やはり迷惑らしい。でも動くのが面倒なのか、そのまま肘掛けにもたれている。


パタパタと、再び主人がリビングに近づいてくる足音が聞こえてきた。


今入ってくれば、猫と人とが種を超えて仲良く寝ている微笑ましい姿をご覧頂けますよ。入って来い来い、早く来ないと猫が逃げていく。


入って来ないし、そのうち猫も逃げてしまった。


あーあ。なんだか起きたらみんないなくなった。


ここでようやく体を起こす。ひとあくびして、やっと人間に戻った。あー、みんないなくなったけど今が1番気持ちが良い時間。さてと、頭がスッキリした。ステキに覚醒していられる時間は1日の中でもほんの少し。何からやろうかな。


そう思った瞬間、やれやれやっと起きたかと、そのオス猫はやって来る。


猫缶を開ける私の、最近年寄りっぽくなりつつある手だけが目当てだ。
コイツは起き上がるまでは使い物にならない。やっと起きたか。ほらほら、早く起きて猫缶を取りに行け。


猫缶を開け、オス猫がガツガツ食べるのに付き合う。夢中で勢いよく食べるので、あたりが汚れる。拭いたり、水を取り替えたりしていると、あっという間に時間が経つ。


ほどなくして頭がステキに冴えている時間が終わってしまう。さあ何しよう。


そう思った次の瞬間、トイレで砂を掻く音がする。


慢性的におなかの調子が悪いオス猫が、食べ終えたと思ったら再び排泄を始めた。


片付けなければ。猫トイレの壁を拭いたりしていると、あっという間に時間が経つ。


そんなこんなで頭がシャッキリした時間は終わり、またボチボチ眠気がやって来るのだった。