五十、膀胱切開の手術で石を3個取り除いた老猫の話。

手術が無事に終わったと病院から連絡が来た。
カテーテルを外して自力で排尿できれば退院とのことだった。

私はまたしても、今それ聞く?という雰囲気に怯むことなく、合計金額を聞いた。
24万3000円とのことだった。
想定していたはずなのに血の気が引いた。24万3000円…何度も繰り返す。頭がクラクラする。地面に倒れ込みそうになる。やはりもう、この子達を見送ったら一生ネコは飼えないかもしれない。
悲しい。

それでもひとしきり「なんてこった!」とか、「なんて日だ!」「あー、もう、あいつ(ソル)大っ嫌い!」などなどボヤくとそれなりにスッキリして、まぁもう、しょうがないじゃないかと思えるのだった。いや、もう思うしかないのだった。

今回の施術内容を説明するから来るようにと言われ、夕方、診療時間ギリギリに車を走らせた。

久しぶりのソルである。
なんだかいっぱしの患者さんぶりだった。

私を見ると、真っ先にクンクンと鼻をひくつかせ始めた。懐かしいニオイと思っているのか、夕食に食べた塩焼きのニオイを察知しているのか。
そしておもむろにフミフミを始めたかと思うと今度は大音量でゴロゴロと言い出した。

先ほど待合室で、足を怪我して入院していた柴犬の退院&お迎え場面に遭遇した時のことを思い出した。
飼い主夫婦が、今にも泣かんとする勢いで、「淋しかった?よく頑張ったね〜」と柴犬を抱きしめ、柴犬はちょっと照れ臭そうな顔で盛んにシッポを振っていた。
その光景を思い出して、自分との温度差にソワソワした。

ついさっき、ここに来る前にルナに向かって
「あいつのとこに行ってくるよ。呼ばれたから仕方ないんだよ。すぐに帰ってくるからね。」
と言ったのである。
しかも先生には、手術が終わった前日に、
「いつでもお見舞いに来て大丈夫ですよ〜」
と言われていたのに、先生も絶対来ると思っただろうに、その日は行かなかった。
それで今日の呼び出しである。

そんな私の心境を知る由もなく、目の前のソルはどうしたんだと思うくらいに大きな音でゴロゴロ言い続け、フミフミし続けている。

ソル、すまない。

元気な顔を見たから安心して、こんな態度なんだよと言い訳してみたが、私の態度はここに来る前から悪かった。ルナが知っている。

「石、見ます?」
先生に聞かれた。

先生は、以前私がルナの粉瘤の中身を嬉々としてカメラに収めていたのを覚えていて、
「お写真撮りますか?」
と、ご丁寧に定規まで出してきてくれた。

「これが粘膜にこびりついてしまっていて、こそぎ落としたんです。で、このちっちゃいのが尿管に落っこっちゃったヤツですね〜。」

それは本当に小さかった。
こんなちっさいヤツのせいで約25万円。
コレは是非、お持ち帰りさせてもらって、ハンマーで木っ端微塵に粉砕の刑にしてやろうじゃないか、なんならその後バーナーで黒焦げの刑だ!と思っていたら、鑑定に出すから持って帰れないとのこと。そうか、だから写真を撮らせてくれたのか。

ソルの方は今日はまだ入院、うまいこといったら(カテーテル外して自力排尿出来たら)あしたの夕方には退院、お持ち帰りとのこと。

とにかく今日はゆっくり寝ておかなければ。