保育園で。代打は辛いよ…という話。

※これはあくまで私の体験談をベースとした話です。保育方法をはじめとする諸々は保育園によって千差万別です。

お昼ご飯を食べて、

「しかし、このお腹の出方は本当にマズイな…よし、今日こそ少しは運動するか!」

と考えている途中、ちょうど、マズイな…のところで保育園から電話が来て思考を中断された。

運動するか!のところまで辿り着けなかったのは不可抗力だから仕方がない。


マナ先生が体調不良なので、お子さまたちの午睡中に交代して欲しいとのことで、急遽出勤することになった。

出勤と言っても数時間。しかも土曜日はお子さまのお迎え時間も早い。
掃除と鍵を閉めに行くようなもので、気楽この上ない。


いつもは出勤前に「おかあさんといっしょ」の動画を視聴したり、曲を聴くことにしている。

普通の大人モードから保育園の先生モードに気持ちを切り替えるためだ。

一般的な大人のモードのままだと、かなりキツイお遊戯もある。
(往年の茂森あゆみおねえさんのイカイカイルカの"そこまでやるか感"は大変勇気をもらえるので、ここ1番の時は必ず見ている。)
保育園で働く姿は、身内には絶対に見せたくないと思っている。


でも今日はそんな必要もなく、気楽な気持ちで出勤した。

案の定、交代した時には既に5人になっていた。

カーテンを開けて、午後おやつの準備をしていると、みんなパタパタと起き出してくる。


やがてアオイくんも目が覚めた。
赤ちゃんの頃にお世話して以来、ひさしぶりの再会である。とは言え、アオイくんは当時のことをもちろん全く覚えていないけど。

目が覚めてすぐ、マナ先生がいないことに気づく。

「なんで先生がいるの?」

と不審顔。
いや、不審顔というより不満顔だ。

マナ先生は、アオイくんの担任の先生である。
新卒で可愛くて、とっても優しい。

だからアオイくんの気持ちはよくわかる。
起きたらこんなことになってしまって本当に気の毒な話だ。

お子さまが少ない土曜日にマナ先生の出勤が重なり、終日ほぼ独占できる絶好のチャンスだったのだ。

「マナ先生ね、今日はご用事で帰りました。だから先生が代わりに来たんだよ。」

「え〜?マナ先生が良かった。先生は帰って!」

「いやいや、そうはいかないよ。だって先生、どうしてもアオイくんに会いたかったし。」

「ぼく、ぜんっぜん会いたくなかった!」

「残念!先生はね、すっごく会いたかったんだ!」

と、押し問答を繰り返すうちに、アオイくんはもう、こんな奴を相手にしても仕方ないといった感じで、渋々おやつを食べ始めた。

食べ終わって4時を過ぎると、アオイくん以外のお子さまにはお迎えが来てしまった。

アオイくんも、大好きなママがいつ来るか、気になって仕方がない。

「ボクのお迎えいつ?」

何度も何度も聞いてくる。

けれど、予定のお迎え時間が過ぎてもアオイくんのママは来ない。

事務所の電話が鳴った。

アオイくんのママだった。

仕事が長引き、急遽アオイくんのおじいちゃんに迎えを頼んだとのことだった。

最終時間の6時少し前に、アオイくんのおじいちゃんが到着した。

「アオイ、今日はママ、お仕事がまだ終わらないってから、じいじいが来たからな。」

「え〜?ママが良かった。じいじいは帰って!」

「いやいや、そうはいかないよ。だってじいじい、アオイに会いたくて走って来たんだからな。」

「ぼく、ぜんっぜん会いたくなかった!」

「じいじいは、アオイにすっごく会いたかったんだ!」

と、私とほとんど同じことを言った。
アオイくんは渋々受け入れて、おじいちゃんと手をつないで帰って行った。


今日はとっでもお気の毒だったアオイくん。

私とおじいちゃんも、ある意味お気の毒だったかもしれない。

が、どんなにツレナイ態度を取られようと、次の代打の機会にまた会えることをひそかに期待してしまうのだった。