指導教官が乗っていたという話。

犯罪歴は多分ない。


交通安全協会には入っていないけれど、自分としてはボチボチ善良な市民だと思っている。


どのくらい善良かと言うと、ごみネットは自分が当番じゃなくても片付けている。


そのくらい善良である。


若い頃に一度、酔っ払って自転車に乗って帰宅する際、ふいにナナハンに乗っているような陶酔感に覚えたことがある。

ナナハン、乗ったことないけど。

ブルンブルンと口で言いながら疾走していたら、心配した警察官が2人、暇だったのか自転車で並走してくれたことがあった。


個人的に迷惑をかけたのはその一度だけだと思う。


そのように善良な市民のはずなのに、警察官がとても怖い。


前世で、何かやらかしているのだろうか。


記憶から消している過去でもあるのだろうか。


警察官が遠目に見えるだけでブルブルと震えがきてしまう。


住んでいる地域の所轄のおまわりさんも、交通講習の教官をされたおまわりさんも、免許証交付の時に説明をしてくれたおまわりさんも、みんな、みんなとても優しかった。


どうしてなのかわからない。


私がこのように怯えているからだろうか、交通違反でよく捕まる。


今までに、駐車違反で1回、スピード違反で1回、時間帯指定通行違反で1回、捕まっている。


私の何倍も一旦停止を忘れ、法定速度超えのスピードを出し、時間帯指定に気づかず走行する主人は過去に一度も捕まったことがない。


私の何百倍も駐車違反を平気でし、スピード違反をし、割り込みまくりの迷惑運転を悪びれずにする義兄とは、捕まっている回数が大体同じである。


確率論的にそういうことも生じ得るのかもしれない。



駐車違反は、友人の家に遊びに行った時だ。


「ここに停めて捕まった人は今までに見たことがない。誰の迷惑にもならないし、絶対に大丈夫だ。」


と言われ、停めたところを1時間も経たずに通報されてしまった。
反則金は友人が割り勘にしてくれた。)


習い事のお迎えに行って、線は引かれたがギリギリ間に合って厳重注意で済んだ時も、先生に、

「10年以上やってるけれど、ここに停めて捕まったヒトなんて1人もいない。」

と言われた。

先生の家の前で、先生に"ここに停めてください"と言われて停めたのだった。


スピード違反は、前を走っていた幼稚園バスが停車してお子さまを降ろした後、先生とママの話が一向に終わらない。


後ろの車の圧が強くなってきたため、やむを得ず対向車線に出て加速し、一気に抜いた直後50メートルくらいのところで捕まった。


時間帯指定通行違反は、今まで一度も行ったことがない街で迷ってしまい、たまたま入りこんでしまった住宅街の道路が時間帯指定だった。


いくら注意しても通行する車がいるので張り込んでいた、とのことだった。


一体どうして私にばかり注意を向けるのか、と正直なところウンザリしている。


車も日本で最も乗られている、一般の善良市民向けの大衆車だ。(今は違うけれど)

納車日に色々葛藤したという話。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。


理由はわからないが、ここまで気にかけてしまう存在なら、ピンチの時には是非助けに来てもらいたい。


それに、世の中には交通ルールを守れないヒトがたくさんいる。


その人たちだって大切な人間、私のことばかり気にかけていてはいけないよ、と言いたい。


それからもう私は十分に監視されているから、これ以上の監視には及ばないと思う今日この頃なのである。


新車だ。


新車の監視がものすごい。


私のやるコトなすコトをすべて見ていてダメ出しをしてくる。


そのため、運転中は常に緊張を強いられている。


やれ、右前が危ない、左後ろが大変なことになっている、シートベルトを付けてないじゃないか、おっと前に詰め過ぎだよ…など、とにかくずっと喋っている。


車が喋る時代になった。


現在、1人で乗っているとは到底思えないほど賑やかな状況下にある。


文句をブツブツ言っていたら、その悪口は全て録音しているのだと言う。


あげくエンジンを切る際には、今日の運転を100点満点で勝手に評価する。


ふんわりとブレーキが停められたね、とか、発進がスムーズだったよ、とか。


指導教官にでもなったつもりでいる。


そういうわけで、私の車には口うるさい指導教官が乗っている。


こんな車に乗ることになってしまったので、もはや心配ご無用、私のことは今後気にかけないでくださいと心から思うのだった。