最近つくづく、
ルナと私は熱いな、と思っている。
もう、ほとんど付き合っている。
朝、出発する時の別れがたまらなく辛い。
私が出発する頃、彼女はひととおりの欲求を満たし、再度ベッドに横たわり二度寝を楽しんでいる。
すべての欲求を満たした後だから、心に余裕があり、日に一度しかない受け入れ態勢でいる。
いつになく、
「こっちに来たら?」
と、目で誘ってくる。
足が勝手にベッドに引き戻される。
目が合ったら最後、出かけられない。
ベッドに戻り、ひとしきり撫でる。
通常の2割増の音量で、ゴロゴロ音を聞かせてくる。
「キモチイイ…」
と、恍惚とした表情を見せる。
でも時間だ。
立ち上がる。
ドアの手前でチラッと振り返る。するとまた目が合う。
「行くの?」
と切ない視線を送られる。
「行かない行かない、いるよここに」
と猫撫で声で言いながら再びベッドに戻り、撫でる。
意を決して立ち上がる。
ドアの前で振り返る…
というのを大体、毎朝3回は繰り返している。
朝のお約束、というやつである。
時間配分に気をつけて、出発前に3回は繰り返せるように余裕を持つことを心がけている。
こうして日々、後ろ髪を引かれるように出発している。
保育園に通うレナちゃんとレナちゃんのパパにも朝のお約束があり、登園の日の日課として欠かさずこなしている。
この2人も、もう、ほとんど付き合っている。
(ただ私と違い、残念ながらレナちゃんのパパは早晩フラれる運命ではある。)
パパ…「レナ、じゃ、パパ行くね!」
(行く気ゼロ)
レナちゃん…「パパ〜」(号泣)
パパ…「ああもう。しょうがないなぁ。パパもう行かなきゃ。じゃ、ギュ〜しよう!ギュ〜ッ」
(抱きしめる)
レナちゃん…「パパ〜」(号泣)
パパ…「もう、困ったなぁ!じゃ、ほんとにもう行くね!行くよ!バイバイ!いい子でね!」
(何度も振り返りながらようやく退場)
レナちゃん…「パパ、パパ〜…」(最後なので激しめに号泣)
…ここからがレナちゃんの本領発揮である。
パパの姿が視界から完全に消えたその瞬間、クルッと後ろを振り返り、ニコッと笑うのである。
レナちゃんはまだ1才でお喋りができないけれど、間違いなく、
「今日も上手にできたでしょ!」と目で伝えてくる。
そして先ほどの切ない別れのシーンからは、別人にしか見えないほどサッサと立ち上がってお部屋に向かい、「お待たせ!」とばかりに景気良くドアをバーン!と開けて入っていく。
私はこの光景を見るたびに、レナちゃんのパパはこれから先もずっとレナちゃんの思い通りだな…と確信する。
そしてふと考える。
ルナは今頃どうしているだろう。
レナちゃんと違って、私がいないから淋しくて眠れないでいるかもしれない、と思っている。