ヒトに自慢できる唯一の能力だった「視力」が、老化ですっかりダメになってしまった。
その事実を先日の健康診断で突きつけられたのだった。
老いる楽しみが欲しいという話。 - onoesanとなんやかんや。
もはやヒトに誇れるような良いところなど何一つない、くたびれたチビデブおばさんになり果ててしまった…と、このところ気持ちが塞いでいた。
ところがここに来て、起死回生の満塁、ほどではない、逆転…同点ホームランくらいが打たれたのであった。
先日の祝日のことである。
久しぶりに会った友人は、私よりずっと若いくせに、
「主人の20代の頃の体重を超えた」
という私の自虐ネタに、間髪入れず
「アタシは臨月の時の体重を超えた」
と返してきた。
お互い体重の増量に関して、今、完全に波に乗っている。
食べたモノはすべて下腹部に吸収できる体になっている。
ノウハウはない。中高年になったら自然とそうなった。
相撲部屋にいたら、オマエはすぐに増量できて良いよな、と、なかなか太れない若者たちに羨望の眼差しで見つめてもらえるかもしれない。
そのような、大人の不思議なカラダ事情を抱えて2人でスポーツジムの春のキャンペーンに出かけたのだった。
その日は、入会しなくても1000円払えばマシンは使い放題、スタジオレッスンは受け放題。
シャワーも使用可能な上に、お土産として"体組成表"というものをプレゼントしてくれる、というお得感てんこ盛りのラインナップだった。
最初に参加したヨガプログラムは、リラ〜ックス…と3回囁かれたところであっけなく寝てしまったのでまったく記憶がない。
次に臨んだ筋力トレーニングのプログラムには、私の腹筋も大腿筋も全然ついていけなかった。
弱音を吐いていたところに、ショッキングピンクのトレーニングウェアに身を包んだ女性がやって来て、
「若いヒトが何言ってんの!アタシはこう見えて、全然見えないってみんなに言われるからビックリするだろうけど、もう76よ!
アナタしっかりしなさいよ…!私はね、もう76なのよコレがもう…あなたビックリするだろうけど…」
と、延々と話し続けられてしまった。
ハッと気づいて、ようやく
「そんなお年には全然見えませんね」
と答えると、すぐにどこかに行ってしまった。
結局、この段階でクタクタになってしまい、帰る準備をしていたら、トレーナーさんがA3のカラフルな紙を持ってきてくれた。
ここに現在の自分の体の様子を数値化したデータが記載されているとのこと。
そう言えば来てすぐに、機械の上に乗って片足立ちしたり、体を捻ったりしたのを思い出した。
どれどれ…と見てみると、2ヶ所にはてなスターのような星がビッシリとついている。
一つは、二の腕の筋肉。アスリート級、とあった。
それから推定骨量。最高ランクだった。
どちらにも心当たりがある。
推定骨量。
これは、中学時代にさんざん骨を痛めつけてきた賜物だろう。
器械体操部にいたが才能がなかった私は、とんぼ返りとかバク宙とかを怖々やり、怖々とやるから失敗を繰り返し、そのたびに床にカラダを打ちつけまくっていた。
フカフカのマットは上級生が使わせてくれなかった。
でも今思えば、成長期のこの頃に痛めつけたことで、私の骨は中身がギッチリと詰まったのかもしれない。
そして二の腕の筋肉。
コレはもう、ひとえに赤ちゃんセンパイたちのおかげに間違いないのだった。
保育園で。働き始めて1年目に受けた洗礼 - onoesanとなんやかんや。
その日は、図らずも鍛えてくれた赤ちゃんセンパイたちと、中学時代にマットを使わせてくれなかったセンパイたちに感謝したのだった。