50代にして姉が変わったという話。

今週のお題「変わった」

私が「変わった」話ではなく、50代半ばの私の姉が「変わった」という話である。


1年くらい前からだ。


月に一度くらいのペースで、朝起きてラインを確認すると10件以上入っている時がある。


見なくてもわかる。すべて姉からである。


夜、どうにも1人で気持ちを処理できなくなると私のところにLINEを続々と送ってくる。


そして数日経つと

「ごめんね。気持ちが盛り上がりすぎて誰かにどうしても見せたくなっちゃって…」

という詫びのLINEが

「で、送った動画は見た?どうだった?」

という視聴の確認とともに入る。


LINEのすべてが動画である。


見ておかないと答えられないような確認が入るし、そこで姉の期待どおりの返事ができないと、さらにたくさんの動画が送られてきてしまう。


ポイントを押さえつつ再生速度を上げて視聴しているが、正直言ってよくわからない。


語学の勉強も始めたらしい。


共通の趣味を持つ人たちとのコミュニケーションを通して、今ではかなり話せるようになったようである。


若い頃から家に引きこもり気味な姉が、先月は泊まりで大阪まで行き、東京や横浜にもよく出かけているらしい。


…年をとると、ヒトはなかなか変われない生き物なんじゃなかったのか。


私など、ここ数年はコロナを言い訳にして、実際のところ外出が億劫になってきている。


って本当にスゴイ。


いくつになってもここまでヒトを変えてしまうものか。


去年、どうやら姉は恋に落ちた。

そして結果的に、この一年で思春期のムスコよりも変わったのだった。


そう言えば髪の色も変わった。


茶髪の姉を見たのも、メガネをコンタクトに変えた姉を見たのも、1人でライブを観に行く姉を見たのも、人生始まって以来である。


体力的な限界を金銭で補いながら、全力で邁進している。


幸い不穏な恋ではなく、相手は韓国のアイドルグループの男の子たちだ。


推し活とか沼落ちという表現もされるこの現象、症状で言ったらもう完全に"恋"と言って良いと思う。


メンバーが20人以上いるのにも関わらず、韓国語の名前を完璧に覚え、顔の見分けが完全についている時点で、私からすればもう驚異的ですらある。


こっちは日本人だって全然わからない。


最近では韓国語の会話だけではなく、ハングル語の読み書きも着々と進歩しているらしい。


この勢いなら、年内には1人で韓国に行ってしまうだろう。


先月お墓参りに帰省した際、荷物を取りに姉の部屋に入った。


一瞬、姪っ子と部屋を交換したのかと思った。
しかし老眼鏡やヘナクリームの存在が、そうでないことを物語っていた。


グッズやポスターが壁にペタペタと貼られまくり、そこにあったはずの、大量の本や漫画、何より愛読書である100冊を超える「パタリロ!」が忽然と消えていたのだった。


呆然としているところへ姉から電話が入った。
画面では、お化粧をキレイにした男の子たちが踊っている。


処分する漫画や本で欲しいものがあったらすべてあげる、とサラッと言う。


このところ、断捨離は進まないし、体型はチビデブおばさん一本道だし、体力落ちて疲れっぱなしだし…とグダグダな私に比べ、恋をした姉は、大量の蔵書をスッキリ整理し、見た目を大いに改善し、勉強まで始めてしまった。


恋によって生活全般が変わり、勢いづいている姉がただただ眩しい、この頃なのだった。