明け方に飼育員のような気分になりながら、介護の大変さを思う。

この1週間ずっと気持ちが奮わなかったのは、梅雨の天気のせいかもしれないし、思いがけないところから予想もできない敵意を向けられて、それを体力気力が落ちていたためにうまく避けられず、うかつにも真正面から受け止めてしまったせいかもしれない。

けれど何より、すべてひっくるめた最大の原因は"夜勤"による睡眠不足だ。ああ今日は昼寝ができて最高!!ネコたちも2倍は可愛く見える。

この1週間というもの、老猫ソルは、食べる時間の工夫も吐き気どめを飲むタイミングの調整もむなしく、深夜の1時30分台に嘔吐を始めることを日課にしていた。

毎晩、それはすばらしく正確に、時計が深夜1時半をまわった頃にスタートする。

派手に吐く音で眼を覚ますと、それがいつだって判で押したように正確にその時間だったから、7日目の昨日は少しワクワクと時間を確認してしまった。1時32分だった。すごい!

この時点でベッドに再び戻ることは諦め、読みかけの本と念の為の目覚まし時計を持って階下に降りる。

その方がラクなのか、ひとしきりリビングや廊下を走り回って、その先々で吐き散らす。
足元に気をつけつつ、ぼろ布やトイレットペーパーを汚れた床に置きながらリビングにたどり着く。

ひとしきり吐き終えると、少しはマシになったような顔をして、今度は下痢便を2度ほどする。
そうしてやっと、ほっとした顔になる。

2匹が汚れた場所やトイレに行って二次災害を引き起こす前に、手早く拭き掃除をする。
多く入れると飲み過ぎて吐くので、少ししか入れておけない水皿の水を足したり、一度に大量に汚れてしまう猫砂を補充したり、合間に少しうたた寝したりしていると、3時頃にまた静かな夜が戻ってくる。

そして1時間後。
4時になると、今度はお腹が空いたと鳴き始める。
放っておくと2階に上がって、

「誰か起きてくださーい!誰かいませんか〜!?おーい!!」

とばかり大声で訴えに行くうえ、おなかが空き過ぎても吐いてしまうため、観念して渋々ソファーから起き上がる。

昨夜の胸肉が残っていればそのままほぐして皿に盛り、なければ、高いけど下痢にならない缶詰を開けるか、サツマイモやニンジンを擦りおろして胸肉と一緒にレンチンする。

気分は夜勤のライオンとかトラの飼育員だ。
夜間の餌やりはないだろうけれど。

大体、この一連の行動がもしも夜中の1時半からではなく、そしてソルがもしもネコではなかったら。

例えば時間が朝の7時で小学1年生だったら。
「吐く」のではなく「歯を磨く」なのだとしたら。

褒められるべきくらいにキチンとできた1週間だった。

おかげで今週は、夕食を用意して息子を塾に送ったら、そのまま気を失うように寝落ちした。

時間にしたら数十分なんだけれど、起きてしばしの間ぼけーっとした後のスッキリ感は最高だった。

この眠りから目覚めた直後は、いつも「今、何時で、どこで寝ていて、なぜ寝ているのか」が、まるでわからず、とても焦る。
しばらくして、そうだそうだと思い出してホッとするのだが、毎回ものすごく深く寝た気がする。

気絶のような居眠りタイムのおかげか、この夜勤ルーティンをそこまで憎まずに済んでいる。

むしろ少し体がラクになったのだろうか、明け方までしばしの眠りにつく、そのお腹がゆっくりと呼吸で動く様子がたまらなく愛おしいなと思えている。

そう思えなくなったら、この夜勤ルーティンはもう相当キツイだろう。
愛玩動物だからギリギリやれているのだとつくづく思うし、これだって、私自身が大きな体の不具合を抱えていない今だからやれているのだ。
誰かの介護を、今この時も現実にしている人がたくさんいることに改めて思い至る。
どんなに心が折れそうになっても、折れても、やるしかないからやるのだろう。
どうか少しでも、そういった方々が安らげる時間を持てますようにと思わずにいられない。

それでもこの細切れ睡眠は、体と脳だけではなくメンタルにもとても良くないから、やっぱり時間をもう少しずらして欲しい。
おい、そこのヨダレを垂らして寝てる君。
昼間、寝過ぎなんじゃないの?