転がる空き缶と充電式のような老猫

救急に連れて行く可能性のある老猫のため、1日の終わりをアルコールではなく冷たいお茶で締めている。


少しずつ慣れてきて、もはや近くで冷えた生ビールでも飲まれない限りは我慢できるのではないかという程、心に余裕が生まれつつある。


ただ。


自分が飲んでもいないのに、朝から晩までシンクに空き缶がゴロゴロと転がっている。


老猫たちのせいだ。


最近の彼らは、猫缶を飲み物だと思っているフシがある。


くしくも価格も缶チューハイからプレミアムモルツあたり。


すごいスピードで一缶平らげては、また次の缶を要求する。2匹ともプレモルを飲むと体調が良くなるという。


いまさらながら、彼らと私の間に完全な主従関係が成立していることを実感する。


膀胱炎の診断をされたばかりのルナは、本当なら市販の猫缶なんて食べている場合ではない。


速やかに尿石防止の療法食に移行すべきなのである。


でも、ソルが猫缶を食べる以上は、自分だってどうしてもそっちを食べたい。


だから最近のルナは、ずっとリビングにいる。


トイレすら、リビングに新たに設置したソルのトイレで済ませるようになった。


欠かさなかった早朝のベランダパトロールもずっとさぼっている。


席を外している間に猫缶がサーブされてしまう危険があるからだ。


日夜、油断も隙もないヤツだと疑り深い目で私のことをマークするようになってしまった。



一方、もって1ヶ月と言われてから2週間が経ったソル。


さっきまでガツガツと食べていたのが急に倒れる。


呼吸が荒くなり、そのまま瀕死の重体という雰囲気で1、2日過ごす。


その後、充電が完了したかのように急にケロリと起き上がって、またガツガツと食べだす・・・というのを、この2週間の間に3回やっている。


病気というのは波があるのはわかっているが、徐々に衰弱していくイメージを持っていたから、ソルの様子に正直とまどっている。


こんな、充電式のようなやり方もありなのか。


昨夜片づけたばかりのシンクには、既に空き缶がゴロゴロ転がり始めている。


今日も倒れるまで飲むから猫缶出してと言っている。