ひさしぶりのビール

老猫ソルが、今日も朝っぱらから猫缶をグビグビと夢中で飲んでいる。


飲み物のように一気に食べては、「ハイハイ、まだまだ入るよ!おばちゃん、早く次の、持ってきて!」と立ち上がって得意のポーズで拝み倒してくる。

その姿を見ていると、おばちゃんは本当に、うっとりと幸せな気持ちになる。


元気で嬉しいよ。今日もほんとにありがとう。


心からそう思っている。


けれど。


緊張感が少しずつ薄れてきた、というのもまた真実なのだった。


よくもって1ヶ月、の1ヶ月はもう、次の木曜日にやってくる。


だが、ここ10日近くは本当にいつもと変わらない。


主人などは、前より元気になった気がする…とまで言っている。


一方の私はソルの夜中の急変が心配で、診断が出て以来ずっとお酒を飲まずにいる。


お酒のない生活にすっかり慣れたと思っていたけれど、不意に、表面に冷たい汗をかいた生ビールのジョッキをありありと想像してしまった。


いや、想像ではなかった。

 
美味しそうな生ビールのジョッキを今から飲むんです、という罪作りな写真を掲載したブログを朝っぱらから見てしまった。


おまけにその直後、海で手作りのお弁当を食べちゃってます、という最高に素敵な休日を満喫するご家族のブログを見てしまった。


海・・・。


泳がなくても良い。堤防でのんびり、ビールと本を片手にサビキ釣りを楽しんだりしたい。


もくもくした入道雲と水平線をたっぷり味わって、小さな鯵をたくさん釣って家に帰ったら、ビール片手に気軽に丸揚げして南蛮漬けにしてバクバクと食べたい。あーあ。


ダブルでお誘いされたらもう、ほとんど蟄居的な生活を送る私の欲望はひとたまりもなかった。


このままでは、ソルが元気で(猫缶を)飲めるうちは私が(お酒を)飲めない、ということになってしまう。


とにかくイケるとこまでイクから、という勢いで食べているソルを見ながら、私も久しぶりにイケるところまで飲みたい…と思ったのだった。


病気の特性上、急変したら一目瞭然ということなので、その場合はすぐに病院に連れて行き、鎮痛剤だけは速やかに打ってほしい。


夜間に急変してしまうと、車で30分はかかる夜間救急に連れて行かなければならない。


考えていると、珍しく私のことが視界に入った主人が「どうしたの?」と聞いてきた。


話したところ、答えるのも面倒くさそうに「どうしてタクシーじゃダメなの?」と言われた。


乗らな過ぎてその便利な乗り物のことをすっかり忘れていた。


ありがとう。


海には当分行けそうにないけど、今夜からはソルと一緒にグビグビいきます。