息子の賢い友達の話。

中学2年生の息子の友達に、とても賢い子がいる。


勉強も運動もズバ抜けて優秀、ご両親ともに素晴らしい経歴を持つエリート、腹の立つことにイケメンで背が高くもある。


昨日はサッカーの練習が遅くなったので、息子と、その子を含む息子の同級生3人を車に乗せて家まで送り届けた。


車に4人の中学生が乗り込み、出発すると同時にその講義は始まったのだった。


テーマは「生活リズム」だった。


賢いお友達(以下、賢)

「ところでさ。みんな、夜は何時に寝てるの?」


他のみんな(以下、み)

「え〜?11時とか?10時半かなあ…」


(賢)「あー、それは良くないよ、遅すぎる。だから朝、起きれないんだよ。人間は太古から暗くなったら寝るように体が設計されてるんだから。」


(み)「え〜…だって、塾から帰ったらもう10時だし。無理だよ〜」


(賢)「塾の功罪、それはもう大人の責任ではあるね、そこは確かに今の僕たちにはどうにもならない部分でもあるよ。親の考えを否定するわけにもいかないしね。でも、理想を言えばだよ、いや、理想じゃないな、本来だ。本来なら、学校の授業を完璧にしていたら塾に行く必要なんてないんだよ。ただ、それを言っても仕方ない。僕らは僕らで、出来る限り寝る時間を早める努力は必要だよ。まぁ僕は塾に行ってないけどね。」


(み)「…。」


(賢)「これはぼくの場合だけど…。まあ、クラブで遅くなって仮に8時半になったとするね?そしたら母親がいい感じでお風呂を作ってくれてあるからすぐに入る、で、すぐ寝る。そうすれば仮に5時に起きても8時間の睡眠が確保される。5時に起きたら、頭が冴えている30分間すぐに勉強をする。頭が最高の状態だから30分で十分。そのあとに軽く運動する。僕の場合は家の近くを軽くジョギング。で、家に帰ったら朝ごはんを食べる。この朝ごはんは夕食を3としたら7のボリュームでバランスよく食べるんだ…」


(み)「塾から帰ったらお腹が空いてるから何か食べたいよ〜」


(賢)「それはわかるよ、僕も成長期だからね。それは同感。そういう時は消化に良いものを軽くつまむ。で、寝る。」


(み)「そんなにすぐに寝られないよ〜」


(賢)「今は刺激が多いからね。でも試しに今日、部屋を真っ暗にしてベッドに入ってみてよ。3分で寝られることを保証するよ。考えてみなよ。これだけ体を動かしているんだから、暗くなって横になってれば絶対すぐに寝られるんだって。」


(み)「…。」


このあたりで皆、反応しなくなってきた。ボーっと外を見始める息子たち。


こんなに流暢に話せない私は、ここぞとばかり便乗することにした。


「みんな聞いた?いい?お母さんたちがいつも言ってるのはこういうこと。わかった?今、とっても良いこと言ってたよ。今日から早速、早く寝ようね。」


などと、大人っぽく総括した。


誰も何も言わない。多分みんな、うまいこと乗っかったなと思っている。


でも実際、親に言われるよりはずっと説得力があるだろう。なんて頼りになるお友達。


…ただ、この、素晴らしく賢い少年は、一体どのような中学生活を送っているのだろうか。


話の噛み合う同級生が、いるのだろうか。


家に帰って聞いてみると、彼は学校で「論破王」と呼ばれており、先生方にも一目置かれる存在らしい。


…まあ、そうだろうな。


そして、オールジャンルで高スペックにも関わらず、まったくモテないらしい。


それについてもやっぱり、


まあ、そうかもしれないな…


と、思ったのだった。少なくとも、この生活リズムに関して話が合うのは中高年ではないだろうか。


こんな息子だったら絶対に禁酒させられる羽目になるし、朝っぱらから夕飯レベルのメニューを並べなければならない。


次回の講義のテーマが楽しみなのと同時に、自分の子じゃなくてちょっとホッしてしまったのだった。