オス猫はこのニオイを本当はどう思っているのか。

ヨレヨレの体にたくさんの病気を抱えながら、秋に向かってますます食欲旺盛な老猫、ソル。箱入りジイサン。15才。


何事もなかったかのようにシレッと生活しているが、余命宣告された日から2ヶ月以上が過ぎている。


時にしおしおと、時にガツガツと。明日は明日の風が吹く。一寸先は誰にもわからない。



相変わらず、オナラのクサさは家族の中でも群を抜いている。


音はない。


激臭は予告なく、食事中だろうと密閉中だろうと、扇風機の風に乗って運ばれてくる。


刺激的過ぎるニオイは全て病気のせいだ。おなかが痛くはないかと心配こそすれ、責める気などまったくない。


しかし、ニオイの出どころはついつい確認してしまう。


気にしないタイプだから傷ついている様子はない。


居場所を確認すると、我関せずとグウスカと寝ている。


もしくは、キリリと素敵にしている。



気品すら漂わせた涼しい顔をしている。


そう言えば血統書に記載された正式名はGreen Forest Azul である。


アズールの僕に何か?という顔をしている。


その名前にふさわしい顔をするのは、オナラをした後だけである。


寝ている時にオナラが出るのは体が弛んでいるせいで、本人も無意識だろう。


では、起きている時のこの表情はなんだろう。


クサくないのだろうか。


クサッ!!という顔をしているところを見たことがない。


真顔で正面を見つめている。


誰かのせいにしようとして、平静を装っているのだろうか。


そんな顔をされても私はしていないし、ルナもしていない。犯人は明らかだ。


彼の目をじっと見つめ、


「今、したよね。」


ゆっくりと丁寧に、本人に指摘する。


いたたまれなくなって目を逸らすかと思いきや、真っ直ぐ見つめ返してくる。


そのうちスッと立ち上がり、


「ハラヘッタ」


と手を合わせてくる。



猫はオナラをしても気づかないのか、気づいているけれどバツが悪くて知らんふりをしているのか、自分のニオイだからツラくないのか。


これからも彼を観察していけたら、と思っている。