※これはあくまで私の体験談をベースとした話です。保育方法をはじめとする諸々は保育園によって千差万別です。
朝、保育園の最寄駅で、遠目にカズくんとカズくんのママが見えた。
カズくんは隣のクラスの、もうすぐ2才半になる男の子だ。
朝からウキウキと、とても楽しそう。
私は内心、
ー「おっ、今日はいいかも…」
と思い、気持ちが少し軽くなる。
ふとカズくんが、見慣れないアンパンマンのリュックを背負っていることに気づく。
ー「あれ?今日、カズくん休みだっけ?」
やがてママが気づいて、遠くから会釈をしてくださった。
なんとなく困ったような顔をしている。
なんだろう…。
ホームの階段を降りたところで合流、挨拶すると、カズくんはとろけそうな笑顔で言った。
「先生!カズくん、電車に乗って、ママとおばあちゃんのおウチに行くんだ〜!」
そう言いながら、ちょうど同じタイミングで改札を通過して駅を出たのである。
もう電車には乗れないし、着々と保育園に近づいている。
「今日はもう本当にひどくて…他にどうしようもなくて…」
ママが困り果てた表情で、消え入るような声で教えてくれた。
ママの浮かない顔と、カズくんの浮かれ顔の理由がここではっきりする。
2才くらいのお子さんの視野はまだまだとても狭い。
そして、おばあちゃんのおウチに行くのだ、と信じたら、周りの景色なんて関係なくなってしまう。
嬉しさがすべてを凌駕する。
ママもそれを狙って、つい言ってしまったのだろう。
やがて保育園が見えてきたけれど、カズくんの目には全然映らない。
エントランスを通過しても、ご機嫌なカズくんはまるで気がつかない。
(大人ならありえない話だ)
入り口のドアを開ける施錠解除のブザーが大きく鳴り響いて、初めて「はっ」とした表情で辺りを見渡した。
その瞬間、いつもの絶叫、ゲキオコな朝が始まった。
ママはピュ〜ッと去って行った。
その去り際、正解!と思う。グズグズとどまったところで良いことは何ひとつない。
頑張れカズくん!
頑張れカズくんの担任の先生!
心の中で精一杯のエールを送りながら、30分後に登園予定のソウタくんのことで早くも頭がいっぱいになるのだった。
保育園で。保育士だってイヤイヤ期には苦労する。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。
どうか今日は少しでも気分良く登園してくれますように。