保育園で。4月は試運転という話。

※これはあくまで私の体験談をベースとした話です。保育方法をはじめとする諸々は保育園によって千差万別です。

4月の初め、慣らし保育の頃の保育園は、泣き声に始まり泣き声に終わる。


ここで大泣きしてくれた方が、予後というか、その後スムーズにいくことも多いし、派手に泣いているお子さまでも、泣きながらも実は周りをチラチラと窺う余裕はあったりして、これはもう慣れるのも時間の問題だな…と感じる場合も多い。


だから泣くのは全然問題ないし、仕方がないと思っている。


思っているのだけれど、例年、泣きじゃくる0才さんを、なかば強引にパパやママから預かる(引き剥がす)自分は、ここが保育園のエントランスでなかったら人さらい以外の何者でもないよな…などということを思いながら、お部屋に拉致するのだった。


これはもう4月の、やるしかないお仕事である。


それでも例年、この新しい出会いに勝る楽しみはないし、新しいお子さまたちが入園してくれることが、離れるお子さまたちとの別れの淋しさを埋める唯一のクスリでもある。


1日も早く園に慣れ、可愛い笑顔を見せてくれるのが待ち遠しい、4月の春なのである。


そうした中、前の年に見学に来てくれたお子さまの顔は大体覚えている。


だから入園式でそのお子さまの顔を見つけると、とても嬉しく、これから一緒に過ごせるのだと思うと笑いが止まらないのだった。


ただ、笑いが止まらないのはこちらだけで、ご本人たちの顔は、まあ全般的に引き攣っている。


正直、引き攣っているところも可愛い。


気分的にはまだ先生ではないし、他人でもないので、心境的にはファン心理というのが最も近いかもしれない。


ボンレスハムのようなムチムチした太ももとか、ムニムニのほっぺたとかは他の追随を許さない、圧倒的なオーラを放つ。


一年ぶりのそうした"赤ちゃん"の登場に気持ちは浮かれまくる。


実際に保育がスタートし、大変になってくると、

「この前育てて大きくしたばっかりなのにまた元に戻っちゃったかー。」

という気分にもなったりするが、裏を返せばまた感動の一年を味わえるわけだから幸せなことである。


新入園児の保護者の方には例年、入園前に質問用紙をお配りし、記入をお願いしている。

ご回答頂いた内容は熟読し、妄想し、気づけば暗記している。


ご家庭での呼び方、好きなおもちゃ、好きな抱っこの仕方、入眠スタイル、好きな遊び、生活時間などなど、たくさんの質問にご回答頂く。


それをじっくり読むことも、これまた大切なリハビリ、というかポッカリ空いてしまった穴を埋めるのに大変有効である。


0才児クラスの担任になると、あの用紙がなければ、若干の手持ち無沙汰感のある"慣らし保育"の間、前年度に受け持ったお子さまたちの様子が気になって仕方がない。


前年度に0才児クラスを担当していたりすると、気づくとついついお隣の1才児クラスの壁に近寄り、聞き耳を立てたりする。


1才児クラスにも当然、新入園児さんが入ってきている。


例年、0才から登園しているお子さまは、生まれ月が4月からの半年間が多い一方、1才から入園するお子さまは、その後の半年間の生まれが多くなる。


そのため1才児クラスは、保育園の生活環境にすっかり慣れた、もうすぐ2才になるお子さまたちと、保育園デビューしたばかりな上に、まだ1才になって数ヶ月程度のお子さまたちの二層に別れることが多い。


あまりの差にショックを受けてしまう新入園の保護者の方も多い。
しかしここで入ってくるお子さまたちは、目の前でトイレにバシバシと向かう、排泄の自立がかなり進んでいるおともだちが、大変カッコよく排泄する姿を間近で見ることが出来るため、触発されてなのかオムツが早く外れるケースが多い気がする。


この、同じクラスにも関わらず、月齢による大きな差に対応するためには、保育士の数も大事だが、保育環境の充実の方がより重要かもしれない。


十分に広々とした見渡せるスペースに、壁面もきちんと有効活用された、豊富な種類と量の遊び道具があり、個々がそれに向かい、一定時間夢中になって没頭してくれたら、それが理想だ。


月齢によって、やりたいこと(二本指でつまみたい、手首を回したい、というような欲求から選ばれる玩具)は自ずと違ってくるので、十分なスペースがあれば、配置を工夫することである程度の棲み分けが可能となる。
それにより、体格差やスピード感の違いによる事故が防ぎやすくなる。


だが実際にはそんな恵まれた保育園はほとんど存在しないので、時間差をつけたり、間に割って入ったりして、噛みつきや押し合いなどが起きないように神経を尖らせるしかないのだった。


そんなこんなで、4月はバタバタと過ぎていく。


お子さまの寝顔はいつ見ても最高だけれど、4月の寝顔は特に貴重でありがたい。

なぜならこの時期、まとまって寝る時間自体が少ない上、生活リズムもバラバラだから、誰かがやっと寝てくれたかと思えば他の誰かが目覚める…ということの繰り返しで、まともな休憩が取れないからだ。

保育園で。0才さんの4月のお昼寝は、入りはかかるけど上がりは早いという話。 - onoesanと猫と保育となんやかんや。


それでも何とか顔を覚えてもらい、生活リズムも軌道に乗り、徐々に保育園ライフに順応して、良い感じになってきたところで、ハイ!ゴールデンウィークなのである。


連休明けは帰省などで生活時間が狂ったりして、あれ?先月に逆戻り?はじめからやり直し?なんてことはよくある。


例年そんな感じなので、4月はあくまで試運転だと思っている。


ゆっくりやろうね、とお子さまの寝顔に話しかけるのだった。