節分がとても地味だった話。

我が家では、本日を節分とした。


定められている季節の行事を私的な都合で変えて良いものか、と言えば、誰にも迷惑がかからないので大丈夫である。


ムスコも幸い、様々な事情がわかる年まで育った。
何の問題もないのだった。



金曜日の夜に、恵方巻なんて面倒なモノを作る気力も体力もない。


恵方巻きの一体どこが面倒なの?という人も世の中にはたくさんいる。
母もその1人だ。
心から尊敬している。


それでもムスコが物心つくようになってから毎年作っている。
理由はひとつ。
市販の恵方巻きに魅力を感じないからだ。

だから毎年、
「あーめんどくさい。疲れてるのに。やだやだ、やっぱり買えば良かった。来年は絶対に買うからね。」
と、うっとうしく文句を言いながら、日本酒を片手に巻いている。

ブツブツ言う私に、家族は何も言わない。内心、
「買えよ。」
とか、

「また言ってる」
と、思っているかもしれないし、そもそもまったく聞いていないかもしれない。


自分で巻くのだから、当然好きなモノを詰め込みたい。
好きなモノとは、まず絶対にサーモン。
シーチキン、ねぎとろ、レタス。

それとムスコはイクラが大好きだ。

が、主人の尿酸値が心配だからイクラは入れられない、ということになっている。

唯一、主人の高い尿酸値が役に立つ場面である。


それにキュウリ。

これこそ今年の悩みどころだった。

キュウリを入れるか入れないか。

これは私の体を張った賭けなのだった。

恐怖のキクラゲ - onoesanと猫と保育となんやかんや。

どうも昨年の夏以降、なんとなくキュウリに対して漠然とした不安を抱えている。


私に攻撃を仕掛けようとしていないか。


キュウリを食べた後に、腹痛に襲われているような気がする。


もしもキュウリがダメになったと仮定すると、メロンもダメになった可能性が浮上してくる。


そんな現実はとても受け入れ難い。


ひとまずキュウリのことは忘れることにしたのだった。


その後、義父の一周忌で主人の実家に行った時に、義妹が自家製のキュウリの漬物を出してくれた。
あまりにも美味しそうで理性が吹っ飛び、食べてしまった。

ところが何も起きなかった。

そういうわけで、入れるか入れないか迷ったのだった。


が、結局のところ入れなかった。

スーパーに行ったところ、キュウリが半切れメロンのような価格で売っていたからだ。

高級品になった顔つきをしていたキュウリは、偉そうで、とても買う気にならなかった。


大好物のサーモンも、主人がアニサキスが怖いから入れないで欲しいと陳情してきた。

主人は元々お腹が弱い。
たまたまテレビでアニサキスが胃壁に噛みついて食い込んでいる映像をアップで見てしまって以来、生魚は解凍品以外は一切食べなくなってしまった。

そんなこんなで、とても地味な恵方巻が出来た。

北北東じゃないか、と誰かが適当に言い、誰も調べなかったため本当の方角もわからず、なんとなく北北東っぽい向きに向いて地味な恵方巻をボソボソと食べたのだった。
(※2023年は南南東でした。)