アラフィフになるまで
「朝は食欲が湧かない」
というのが、どういう感じなのかまったくわからなかった。
それまでは、朝からカレーライスだろうが、スキヤキだろうが、餃子だろうが、おいしく堪能してきた。
朝もおいしいし、船内でも機内でもおいしい。
船や飛行機だと、大抵、近くにいる誰かしらが全く食べられないので2人分、時には3人分頂いてきた。
口内炎もできたことがないし、便秘もしたことがない。
ここまでで唯一のトラブルと言えば、この件↓くらいである。
恐怖のキクラゲ - onoesanと猫と保育となんやかんや。
そんな私から出てきたムスコは、父親そっくりの胃弱体質で、育ち盛りのくせに
「朝から肉はムリ」
などと、いっぱしの口を聞くのだった。
口内炎もしょっちゅう作り
「この痛みはおかーさんにはわからない」
などと言う。
朝からガツガツ食べられない体質なので、当然ながら細くてちっこいのだった。
自分が背が低めで、日頃何かと不便を感じているし、
「男のノッポは七難隠す」
と言うコトバがあるくらいだから、とりあえずもう少しデカくなるといいなと思っている。
本人も「そう思っている」と言うので、それなら今の時代、セノビックなどという商品名のものや、背が高くなるグミ、などというモノも売っているらしいから、おこづかいで買って試したらどうか、と提案したところ、
「卑怯なマネは出来ない」
などと言う。そこで、
「牛乳が卑怯なマネではないのであれば、牛乳を毎日飲んだらどうか。牛乳と言えば背が伸びる、というイメージがある。」
と提案したところ、
「そのままでは飲みづらい。小さな頃にミキサーで作ってくれたバナナ牛乳をまた作ってくれるなら飲む。」
などと、ふざけたコトを言いだした。
「あれは小さくて可愛らしいから作ったのであって、今は作る理由がない。飲みたいなら自分で作って飲めば良いではないか」
と重ねて提案した。
すると片付けが面倒だと、またしてもふざけたことを言うので、それなら諦めろ、と言って話は終わったのだった。
ところが昨日、
「おかーさん、俺、めちゃくちゃ画期的な、すごいコトを思いついたよ!」
と自信満々で台所にやってきた。
「バナナ牛乳って要するにバナナと牛乳じゃん?ね?
だから最初にバナナを食べて、その後すぐに牛乳を一気飲みすれば、それはもうバナナ牛乳と同じコトだよね!
で、試してみたら、もう完全にバナナ牛乳と同じだったよ!最高に頭良くない?」
と、まくしたてた。
頭が良いどころか…と、思わないでもなかったけれど、そんなことはどうでもいい。
そういうところ!
そういうところが、おまえには足りなかったんだよ!
おかーさん、とってもいいと思う!すごく画期的!
と、褒め称えた。
こういう、細かなところを気にしない胃袋と味覚であって欲しい。
そうじゃない人の方が圧倒的多数だし、ムスコも豚肉の脂身がちょっと…などというところがある。
だからまるで、自分の仲間になったようで嬉しかったのだった。
ムスコは珍しく私に褒められて、ますます良いコトを考えようとしてくれたらしい。
今日、開発したての「バナナ摂取直後の牛乳一気飲み」を終えたあと、言った。
「この牛乳に生卵を落としたらどうかなあ」
その時私は、話を聞いているフリをしながらYouTubeでコーギー犬ノエちゃんを見ていたので、テキトーに
「いいんじゃない?」
と言ってしまった。
言ってしまってから、生卵という言葉が頭にやってきて、え?そこに生卵入れるの?そして撹拌はしないの?それは…それは絶対にイヤダ…と思ったが、今さら反応するわけにいかず、
「作ったら、残さないでちゃんと飲みなさいね。」
と言うにとどめた。
ムスコはまるで、小さかった頃のように
「は〜い」
と笑顔で返事をした。
もしも、おいしかったよ!と笑顔で言ってきたら、細かなところを気にしない胃袋と味覚であって欲しいなどと考えていたことを反省しなければいけない。
牛乳に生卵はナイな…と思うタイプでありますように。
そして、いずれにしても明日、私が帰宅するまでにすべて終わっていますように。